猫の死 その2

会社に行く道

いつもの道で猫が死んでいた

毛があって 両縁から中身がぶちゅって出てた

その一瞬

その猫が潰された一瞬

猫は声にならない鳴き声を出したのかなぁ

一度聞いたら頭から離れないような音がしたのかしら

僕のうちの猫だって

車に踏まれたら

こんな形になってしまうんだ

便利は怖い

人間

やってしまったな

やってしまったのに

気持ち悪いって

ぷいってそっぽ向くの

そんで

そんで

行っちゃった

あれれ

猫が

死んだ猫の魂が

そこに来てる

走り去る車を眺めてる

死体を踏む車も

踏まない車も同じ様に眺めてる

そんで

自分の死体を見つめて

少しの間においを嗅いだ

その姿

僕には同じように見えたな

そんで

いつの間にかしら

隣にもいるよ 前に死んだ猫達が

みんなで死体を囲んでる

生きた猫も来てる

あっ

僕の好きだったあの犬だ

僕の知ってる姿で

ぽんぽんの紫のお腹で

くすんだ黄色の縞のちゃんちゃんこみたいの着てる

よたよたしてる

あーよかった

うちの猫も来て

ちゃんと見つめてる

みんなで

たらたらしてる

あーあ

そんでふわふわ

とろくさい感じでみんな宙に浮いた

宙に浮きながら

ゴロニャンしたりしてる

ぷかりぷかり

今日は良い天気で気持ちがいいね

みんなぷかぷか

僕が上を向いたら

太陽が眩しかった

目を閉じた

とじたんだ

そうしたら

それは宇宙だった

真っ白な宇宙だった

太陽が照らしたら朝で

太陽が沈んだら

どこまでも暗いところだった

ラベンダー畑だった

ラッコが水面から見た空だった

少しだけ

僕があの子と夢見た

玄関先でのただいまおかえりも見えた

猫達の表情は変わらないけど

喜んでいるみたいだった

遠くに雪山が見えるのに気付いた

あーそれで

僕って人間なんだなと思った

ひとまずみんな飛んでいった

どうなったかって

どうなったんだろう

僕はわかったような気がしてた

そんなような気が


次の日

猫の死体は

少し乾燥してた


僕は

カラスがつつきにきたら

それでいいと

思ったんだ

もしも

くるとしたらね

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