急に思い出した歌詞から


『酸素と海とガソリンと』

何の最中かは忘れたが、急に思い出した歌詞。
東京自然の『私生活』の歌い出しである。

思い出しつつ、なぜこの曲がいま出てきた?と不思議に思ったのも確か。
椎名林檎さん、東京事変は高校生の頃に出会ってからどっぷりとハマった。まだCD全盛期、TSUTAYAやらGEOでレンタルしてMDに落とした。(録音するという意味での"おとす"は"落とす"で合っているのか?)

私生活は東京事変の『娯楽』というアルバムに収録されている。
恥ずかしながら、"ゆったりしたバラード"という印象で、そこまで自分に引っ掛かる曲ではないという立ち位置だった。同じアルバム内のミラーボール、OSCA、復讐を好んでいた。
iPhoneを持つようになり、Apple musicを使うようになり、音楽のサブスクが一般的になった今も、椎名林檎さんや東京事変は変わらず聞いている。
しかしMDで聞いていた既存のアルバムは、気に入った曲のみダウンロードするようになっていた。

だから尚更。なぜ私生活なんだろうな〜と。
そこまで聴き込んでいなかったから、酸素と海とガソリンと〜の続きの歌詞は浮かんでこない。口ずさみたくてもフンフフン〜である。

またある時つい口ずさんだのは、
"コンパスよ さぁ さしてくれよ 現在地教えて"
私生活のサビである。

ここまで来るといよいよ曲を聴こうかという気になってくる。音楽のサブスクサービスがあって良かった〜と思いつつ、曲名を検索。
すると私生活は当時のものに加えて、新たに新訳版というものもある。柴咲コウさんのカバーもある。

とりあえず当時のものを聴く。
繰り返し頭に浮かんでいた"酸素と海とガソリンと"が流れたとき、これが[エモい]というやつ…!?と誰かに言いたくなる程、感情が揺れたのが分かった。
気になっていた歌詞も見る。
20年程前に出会った曲なのに、まじまじと私生活の歌詞を読むのは初めてのような気がする。

曲が流れていく。歌詞を目で追う。

目の奥が熱くなってゆく。胸が詰まる思いだった。

うろ覚えだった歌詞が前後と繋がったとき。
そしてようやく全ての歌詞と共に、歌声と演奏を享受したとき。
私の深く、深くに、この曲が刺さっていった。

歌:東京事変
作詞:椎名林檎
作曲:亀田誠治

酸素と海とガソリンと沢山の気遣いを浪費している
生活のため働いて僕は都会(まち)を平らげる
左に笑うあなたの頬の仕組みが乱れないように
追い風よさあ吹いてくれよ
背後はもう思い出
向かい風まで吸い込めたらやっと新しくなる

夕日も秋も日曜も沢山はない出会いも浪費している
行ったり来たり繰り返し僕は時代(ひと)によいしょする
あなたの眼には情けな過ぎて哀れに違いない
羅針盤(コンパス)よさあ指してくれよ
現在地を教えて
既存の地図を暗記してもきっとあなたへ向かう

あなたが元気な日はそっと傍に居たい
あとどれくらい生きられるんだろう?
行かないで!
追い付かせて
待ってあと少しだけ
生きているあなたは何時でも遠退いて僕を生かす

J-Lyric.netより引用

もう本当に最初から最後まで全部の歌詞が素晴らしいのだが、私は特に、“背後はもう思い出“が痛いくらいに切ない。

そして2番の歌い出し、“夕日も秋も日曜も” この並んでいる単語が、本来ならゆったりした時間を味わいたいこと(古文でいうところの、いとをかし)の代表に思えて仕方がない。
意識して味わいたい時間だなと思う。

なぜあの頃の私はここまでこの曲に引っ掛からなかったのか。
成人して社会人となって、一人暮らしをして、一丁前に自分の生活を送るようになったあの頃でも、ここまで響いてなかったように思う。
30歳を過ぎて、仕事をして家族を持つようになったいま。毎日を忙殺されるように生きて、ふと立ち止ることがある。ふいに[生活]を振り返る瞬間が訪れるようになった今だからこそ、この曲が刺さるのかしら、と思ったり。

東京事変さん、椎名林檎さん、本当にありがとうございます。
昔何かのインタビューで、“自分の作った曲が誰かの人生のBGMになれば…”といった内容をお見受けした記憶があります。
仰る通り、私の人生にたくさんの彩りを下さっています!本当にありがとうございます!!


余談だが “羅針盤(コンパス)よさあ指してくれよ
現在地を教えて“ のフレーズから、BUMP OF CHICKENのロストマンを思い出す。

選んできた道のりの正しさを祈った

BUMP OF CHICKEN ロストマンより

これも大好きな曲のひとつです。

まさか、思い出した歌詞から、ここまで長い文章を書くとは思わなかったが。でも自分の考えを言語化して残しておくのは面白いことだと思う。

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