つわりって辛い

私は毎日不機嫌で、夫に対してイライラしている。

夫は毎日21時近くに帰宅する。明るい気持ちでおかえりが言えない。これから寝かしつけをする3歳の息子がはしゃいだ声を上げる。
私は目を合わさずに寝室に向かう。

妊娠して、24時間具合が悪い。
ずっと船酔いが続いているようで、寝ても覚めてもムカムカする。少しのきっかけで吐き気が止まらなくなる。頭痛、めまい、眠気、だるさ、自分の体なのに思う通りに動かない。
薬もない。これがいつ終わるのかも分からない。
大好きだったお酒も飲めない、コーヒーも紅茶も美味しくない、食べ物全般が美味しくない、味のないパンが唯一になる日だってある。
でも何かを胃に入れないと、余計に船酔いが深くなっていく。食欲があるはずもないのに、症状を和らげたくて必死に食べられそうなものを考える。
食べたくないのに食べ物のことばかりを考えて、頭がおかしくなりそうだ。
そんな私に、『食欲はあるんだね』と言い放つ。

夫は卵がけご飯をかきこむように食べて、生臭い器をシンクに置いていく。餃子をハフハフ頬張って、喉を鳴らしてビールを飲む。水筒にたっぷりのカフェオレを作っては職場に持っていく。

私は妊娠10週で、しかし夫は何週かなんて気にしたこともないだろう。妊娠週数で女性の心身にどんな変化があり、胎児がどんな成長を果たしているかなんて、知る由もないだろう。
夫のスマートフォンは、ゲームと動画を見るために存在しているようなものだ。

例えば流産したとして、その悲しみや喪失感を夫と共有することは不可能だと思う。
分かち合える気になって欲しくもない。
毎日お腹の中で命が続いているか、不安で仕方がないこと。検索ばかりしてはネガティブな情報に踊らされてしまうこと。気持ちを紛らわしたくても体調が悪くて結局何もできないこと。堂々めぐり。
エコーの前に心臓が早打ってめまいがすること、心拍の確認に涙が出たこと、二頭身になった我が子に思わず神様ありがとうと溢れたこと。
夫は知る由もない。
私の言葉に頷いているけど、分からないでしょう。

父になる男たちは体験して欲しい。
つわりの擬似体験、出産の擬似体験、命を育み育てるということの重さと覚悟を、身をもって学んで欲しい。
職業体験なんて流行る今、妊娠体験だって実現できるでしょう?
24時間、船酔いをして、嘔吐をして、その中で家事育児仕事をしてごらんなさい。
24時間、お腹の中で小さな生命を育ててみなさい。蟻でも金魚でも、自分の体の中で命が続くこと、命が尽きること、実感してごらんなさい。

ホルモンバランスのせいでこんなこと言ってごめんね、ということも私にはできる。
それでも私の体と心を占めているもの、嘔吐ついでに吐き出したっていいでしょう?

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