メモ:SynthVでドイツ語

近頃Synthesizer Vを使ったカバー曲の作成にはまっていて、こんなものを作ったらバズった。

ここで歌われているのはドイツ語だが、Synthesizer Vはドイツ語に対応していないので、別の言語で謎の呪文のごとく発音記号を打ち込んで発声させる必要がある。
古くは初音ミクの頃から、いわゆるボカロクラシカ界隈ではこのようなことが行われてきたが、SynthVではそれらのテクニックが通用することも、しないこともある。備忘録として、今使っているテクニックを記録しておく。

言語の選択

対応している言語のどれかを選んで謎の呪文を打ち込むことになるが、現在のSynthVでは3種類の言語に対応していて、ドイツ語を再現する上でそれぞれに利点と欠点がある。

日本語
利点: 表記と発音が1対1対応しているので、発音記号を直接編集する必要がない。
欠点: r, ä, öの発音が無い(他と区別可能で代用できそうな音もない、と言う意味)。

英語
利点: 中国語よりは発音記号の編集が楽。
欠点: o, 巻き舌のrの発音が無い。

中国語
利点: 上記2言語にない巻き舌のr(r\`)がある
欠点: wの発音がない。発音記号の編集に普通では出てこない記号を使う必要がある

以上から、発音と言う意味で最も離れてしまうのは日本語ということになる。多くの人は英語を選ぶようだが、この言語を使う一番の欠点はoの発音が無いことにある。oとして使える発音記号はao, owの2種類が用意されているが、前者はアに近いオ、後者はオウと言う発音で、純粋なオとは違い、SynthVでははっきり判別可能で、その結果、強烈な英語訛りとして聴こえてしまう。

これを踏まえて私は中国語での入力を行うことにした。

中国語入力でのドイツ語の再現

基本的にピンインを打ち込んでいくことになるが、中国語も表記と発音が1対1対応しない言語なので、結局はほとんどの発音記号を編集することになる。以下、注意が必要な発音を記す。

e : ピンインとしてeを打ち込むと7や@が出てくるが、これらはeの発音と違い、むしろä, öといった発音に似ている。eの発音自体は発音記号"e"として持っているので、すべて置き換える必要がある。

ä, ö : @, 7に置き換える。正確には発音が違うが、割とそれっぽく聞こえる。@は適切でない場合があるので、違和感があれば7などに置き換える。

ü : j uで代用する。やったことはないがyの方がよいかも?

z, s(濁る場合), s(濁らない場合), sc : それぞれ ts, ts\, s, s` に置きかえる。このうちts\は「ザ」ではなく「ジャ」に聞こえる場合があるが、いまのところ法則性は不明。

r : 歌を作る場合巻き舌が期待されていると思うので、r\`を使う。ただし、中国語ではこの音は語尾のerとしてしか出てこないため、この音以外では巻き舌っぽくならないこともある(正確にはこの音は巻き舌とは違うが)。その場合、z`と並べたりすると巻き舌っぽくなることがある。現代ドイツ語の場合はz`を使う。ちなみにVocaloidやCeVIO CSではrを並べると巻き舌っぽくなるというテクニックがあったが、CeVIO AIやSynthV AIでは言語を問わず基本的に通用しない。
※2024/2/3追記
16分程度の短い音符に"r u r u r u"(日本語の場合)で巻き舌っぽくなります。ノートの先頭や末尾を少し削って、この音符を足せばOK。

w : この音が最大の問題で、中国語にはこの音も、類似する音も無い。p wで代用しているが、SynthVのリアルな発言の中で違和感は隠せない。母音に違和感を感じるよりましなので中国語を使っているが、これだけでもなんとかならないものだろうか。
※2024/2/3追記
Synthesizer Vのバージョンアップで言語の混在が出来るようになったので、wの発音が必要なノートだけ英語か日本語に切り替えて、vの音を使えばOK。

母音+ch : ichは「イッヒ」と発音するが、これは「i x」もしくは「i sil x」で再現可能。英語のhより近い発音ができるようだ。silを入れるかどうかは曲調などにもよる。
※2024/2/3追記
achを上記の方法で打ち込むと、本来「アッハ」となるところが、「アッヒ」になってしまう。hhの後に短いaを入れれば「アッハ」になるが、本来無声音なのが有声音っぽくなってしまう。どちらが自然かは曲による。

他の発音はドイツ語の知識があれば容易に想像できると思うので省略する。

ラテン語、イタリア語

上記のテクニックは、対応するアルファベットは異なるがほとんどラテン語、イタリア語にも通用する。ドイツ語に無い要素としては下記がある。

ce ci cae coe cy : 教会ラテン語やイタリア語では「チェ」「チ」のように発音するが、ts`hで発音可能

まとめ

今のところこのようにしてドイツ語を再現しているが、まだまだ違和感を感じる部分も多い。SynthVがドイツ語(現代、舞台両方)に対応してくれれば一番良いのだが、それが難しければ英語でo、中国語でvの発音ができればそれなりに改善するのだが、対応してくれないものだろうか。

このような欠点はあるものの、Vocaloidのころと比べれば格段に良いドイツ語(またはラテン語、イタリア語)の歌が再現できるのは確かである。これらの言語はクラシックの名曲の再現には欠かせない。「発音が違う」などという無粋な突っ込みが来ることがあるが、そんなものは無視して好きな曲を好きに作るのが良いと思う。




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