チェコ語習得に必要な学習時間を考える
先日、英語の記事を読みました。
アメリカのForeign Service Instituteという組織が、70年近い外国語学習の歴史から導き出したデータで、英語ネイティブが仕事で使えるレベルの外国語を習得するのに必要な「学習時間」についての記事でした。
…もうnoteでどなたかがとっくに言及してそうなネタですが。
こちらによれば、英語ネイティブにとっての習得しやすさから外国語が5つのカテゴリに分けられているそうです。日本語にしてみました。
このFSIでは、週に25時間の学習時間が基本のようです。
平日5時間の勉強をする感じですね。
フランス語、オランダ語、ノルウェー語など、英語と近く、英語ネイティブが習得しやすい10の言語が「カテゴリ1」に分類されています。
これらの言語でも、仕事で使えるレベルになるには575〜600時間程度の学習時間が必要なのだそうです。
週25時間の学習時間が確保された環境で24週間、つまり半年弱です。
毎日90分ずつの勉強だと、1年と1か月5日かかる計算です。
ロシア語、ヒンディー語、タイ語、ベトナム語などの42の言語が「カテゴリ4」に入っています。チェコ語もこちらに入っていて、英語ネイティブが習得に必要な時間は1100時間。
カテゴリ1に比べると、必要な学習時間が倍近くに増えています。
日本語、中国語、アラビア語、韓国語は、英語ネイティブにとってもっとも習得がむずかしいとされる「カテゴリ5」で、なんと2200時間が必要だそうです。
あら、カテゴリ4と比べても2倍の時間が必要で、カテゴリ1と比べると4倍近い時間が必要ということになります。
毎日90分勉強しても4年ちょっとかかります。
一口に外国語といっても、やっぱり明らかな差があるようです。
チェコ語を勉強するポーランド人やウクライナ人を見慣れてしまうと、日本人だけ外国語習得の才能が特別に欠けているのかと思うこともありますが、当然そんなこともないようです。
外国語はきちんと時間をかけて習得していくもの、ということがわかります。
同じようなデータがチェコ語にもあるんじゃないかなと思って、いろいろなページをのぞいてみました。
こちらのチェコ語学習サービスでよく見かけるCzechClass101.comのブログによりますと…
「初級レベルで480時間、中級レベルで720時間、上級レベルで1100時間」と書かれています。
この1100時間という数字は、どうも上で紹介したFSIの記事をベースにしてるようですね。
記事そのものも英語で書かれているし、英語ネイティブを基準にした記事ととらえるべきですが、私たち日本語ネイティブにも、一つの目安として参考になるデータと言えそうです。
英語とチェコ語に比べて、日本語とチェコ語は文法的にも語彙的にも遠い関係にあるので、日本人がチェコ語を勉強する場合はより多くの時間がかかると考えておくべきでしょう。
初級レベルに必要な「480時間」についても、毎日90分の学習時間を確保したとして、320日以上が必要です。ざっと11ヶ月です。
日本のカルチャースクール的なところだと、週1回90分で10回とか12回というコースが多いでしょうか。
自分で勉強する時間を作らずにコースに参加するだけの場合は、英語話者がチェコ語でコミュニケーションできるようになる「初級レベルの480時間」に至るだけでも、最低6年くらいかかります。
日本でいちばんチェコ語を勉強する時間が確保されるであろう東京外国語大学だと、入学して最初の2年で語学をみっちりやるということになっていて、90分のクラスが週に6コマあるかなと思います。
この環境だと54週あれば480時間を超えます。
夏休みや行事などで授業のない週もありますが、宿題やテスト勉強などもしていれば、2年生が終わった時点で初級レベルは越えられているはず。
大学卒業までに中級レベルに至るのもご自身の努力次第で可能な状況にありますが、まあ3年になると「専攻語を捨てる」「英語をがんばったほうがいい」とか言い出す人が半分くらいいて、実にもったいないなと思います。
私もチェコ語を教えるようになって、いろいろ考える機会がありますが、週1回のクラスだけで身につけようって思っても、なかなかたいへんよね…と思わざるをえません。
チェコ留学を前提としていてテストに合格しないとならない、という人はレッスン以外に自分で勉強する時間を猛烈に作っていますし、週1回のコースで数年勉強した人が「単語が覚えられない」「チェコ語が身につかない」といってる場合、ただ単に学習時間不足という可能性があります。
試しに、ご自身でもどれくらいチェコ語を勉強してきたか、計算してみてはいかがでしょうか。
少し切り口を変えて、denik.czという別のサイトの読みものを紹介しますね。
こちらには、母語としてのチェコ語の豆知識がチェコ語で紹介されています。数字のデータとして興味深かったのはこのあたり。
かつて『チェコ語常用6000語』という本がありましたが、実際にそういうコンセプトで作られた単語集だったと思います。
あの本に出てくる単語が85%わかるようなら、コミュニケーションができるレベルということになるでしょうか。
私はこの本を大学1年から使っていましたので、90%以上いける自信があります。
しかし、ネイティブのチェコ人は能動語彙が1万語とのことなので、この6000語を自分でフルに使いこなせて、さらにそれ以外に4000語も同じように自分で使いこなせる状態がネイティブなのですね。
私はネイティブではないのですが、ネイティブの言ってることがわかる&できるだけ同じくらい話せるようにと考えるなら、教室で出てくるチェコ語の単語数では圧倒的に足りない、と思います。
毎日どんどん使えるチェコ単語を増やしていかなくては。
そんなの無理、と思う人もいるかもしれませんが、「やるしかない」と思うと体はついてくるものです。
わたくし、コロナ禍の時期からオンラインレッスンを継続していて、とくに今年は集中的にチェコ語力をアップするように意識して過ごしていましたが、たしかに3月より10月の自分のほうがチェコ語が自然と出てくるし、話せてる感覚があります。
何歳であっても自分の能力は伸びるのだ、と実感できるのは何よりうれしいですし、ずっと関わってきたチェコ語がより自分のものになるのはやってきた甲斐があります。
来年も勉強できる環境を作ってみたいなと思っていますが、はてさて。
ここまで読んでいただき、とってもうれしいです。サポートという形でご支援いただいたら、それもとってもうれしいです。いっしょにチェコ語を勉強できたらそれがいちばんうれしいです。