弾

妻の実家に行った。

お義母さんがなぜかバイオリンを見せてくれた。
生まれて初めてバイオリンを弾かせてもらったら、かなり耳障りな音がして
妻が不快そうに顔を歪めて「ｷﾞｷﾞｷﾞ…」と鳴いていた。
妻とお義母さんが居間に俺を置いて別の部屋にいってしまったので、俺はしばらくバイオリンを持ってジッ…と座っていた。

戻ってきた妻・お義母さんとお茶を飲みながら不妊治療の経過などを報告していたら、
お義母さんが
「精子は元気いっぱいだった?」
と聞いてきて、不意を突かれて負けそうな感じになったけど
「そっすね」とCOOLにキメて引き分けに持ち込んだ。

最初の検査で、俺の精子は
「頭と尻尾は動いてるけど前進してない、みたいな奴が多い」
という結果が出ていた。
我が家で俺のバカな精子を真似して頭と尻を振って「イェ～(笑)」っつって踊るのが流行った。
2回目の検査ではそういうバカな精子が減ってマトモな精子が増えてて少し寂しかった。

その後、妻の実家を出て最寄り駅に向かった。

妻の実家と最寄り駅の間にハプニングバーがある。
そのハプニングバーがつぶれていた。
妻が「ここ何てお店だっけ?乱交バー?」と言った。
そんな名称で営業してはいけない。
実家の近くにハプニングバーがあってほしくはないけど、無くなったら無くなったでそれなりに寂しいだろうなと思った。

終わりです。
ありがとうございました。