柘榴の歌Ⅱ
飛び散る滴を拭う為
思いの丈もそのままに
泣き出す淵に立ち尽くす
剥き出しで光る赤い心臓
カッターナイフが待ちきれないと
冷たい鋼は濡れはじめ
円形の旗を駆りたてた
沈みゆく透明の繊維へ
永遠の時を紡ごうと
泡を吐きだす最後の抵抗
追い詰められてすり潰す
弾ける赤子の断末魔
はやくして はやくして
嘆く声の真似をした
化学の香りをまとう錠剤
唇を噛んで上をむく
渇いた共感が剥がれておちる
戸惑う世界を誤魔化して
カッターナイフは動かない
赤い心臓は未だに光り
止まることなく実をかじる
この手で潰したその日から
大きな穴はあいたまま
宇宙の果てまで通じてる
銀の凶器を突きたてて
暗闇のなかで見つめあう
骨が崩れて星になり
新たな傷をつけたとき
あの日のカッターナイフさえ
かたく握れば蘇る
血管 細胞 連結橋
時を止めたら笑いだす
膿で覆った綺麗な肌を
捨てろと歌うひとがいた
カッターの刃をひとつ折る
今日も私は負けました
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