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zakiko333
梅雨晴れ
梅雨の谷間の晴れの日に
ぽかぽか温かい布団
毎度のごとく寝坊して
お昼ご飯に遅刻した
君はいつもの 木陰のベンチで
まるまる太った小雀に
パンの欠片を何度も放る
ごめんごめんと繰り返し
君の隣に腰掛ける
いつもと同じコンビニ弁当
封を破って横に置く
駅から急いで歩いてきたから
僕の背中は汗まみれ
ぱたぱたファイルで風を送って
ごめんと もう一度謝った
僕らはカッコつけ合って
ボロを出さないように
傷つかないように
泣けてくるほど
くだらない話ばかりで
心からの言葉なんて
口に出そうともしなかった
一瞬黙り込んだ君は
ぶっきらぼうに言葉を並べて
小さな 黒い紙袋を
僕の方へと差し出した
ありがとうと受け取って
首を傾げて中を見る
汗ばんだ右頬に感じる
やたら不安げに揺れる視線
からりと華奢な音を立て
ひどく軽いキーホルダーが
手の中で青く微笑んだ
君の親切に驚いて
にやける口に力を込める
どうでもよさげな顔をして
ありがとうと一言
当たり障りなく呟いた
ほっとしたように息をつき
菓子パンを千切る小さな手
僕らは隣り合ったまま
すり抜けるように
誤魔化すように
笑っちゃうほど
気が合わなくて
お互い 相手の眼の中を
覗き込もうともしなかった
そうだよ 僕は単純だ
こんな小さなことだけで
あの空みたいに 広がって
何かが変わっていきそうな
淡い予感に震えてる
か弱く煌く青をなぞった
梅雨の谷間の水曜日
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