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梅雨晴れ

梅雨の谷間の晴れの日に
ぽかぽか温かい布団
毎度のごとく寝坊して
お昼ご飯に遅刻した
君はいつもの 木陰のベンチで
まるまる太った小雀に
パンの欠片を何度も放る

ごめんごめんと繰り返し
君の隣に腰掛ける
いつもと同じコンビニ弁当
封を破って横に置く
駅から急いで歩いてきたから
僕の背中は汗まみれ
ぱたぱたファイルで風を送って
ごめんと もう一度謝った

僕らはカッコつけ合って
ボロを出さないように
傷つかないように
泣けてくるほど
くだらない話ばかりで
心からの言葉なんて
口に出そうともしなかった

一瞬黙り込んだ君は
ぶっきらぼうに言葉を並べて
小さな 黒い紙袋を
僕の方へと差し出した
ありがとうと受け取って
首を傾げて中を見る
汗ばんだ右頬に感じる
やたら不安げに揺れる視線

からりと華奢な音を立て
ひどく軽いキーホルダーが
手の中で青く微笑んだ
君の親切に驚いて
にやける口に力を込める
どうでもよさげな顔をして
ありがとうと一言
当たり障りなく呟いた
ほっとしたように息をつき
菓子パンを千切る小さな手

僕らは隣り合ったまま
すり抜けるように
誤魔化すように
笑っちゃうほど
気が合わなくて
お互い 相手の眼の中を
覗き込もうともしなかった

そうだよ 僕は単純だ
こんな小さなことだけで
あの空みたいに 広がって
何かが変わっていきそうな
淡い予感に震えてる

か弱く煌く青をなぞった
梅雨の谷間の水曜日

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