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三島由紀夫に会ってきた話

今日の夢で、彼と会ってきた。

そうそう、この声。
この声で彼は、しゃらしゃらと喋っていた。
口数は多くないが、寡黙ではなく、眼差しは美しい。
成熟した父性というのはこういうものかと思わせられた。

近所の生垣のそばで立ち話をして
何かただひたすらに励まされていた。
「また来るね」と一言言い残し
彼は、猫になってトコトコ去っていった。

また会える、絶対会える。

そんな確信を抱いたまま、目が覚めた。

3日まえに「音楽」と「潮騒」を古本で購入していて
まだ手に取っていなかったから、
「早く読めよ」と促されているのか。

起きてすぐ、枕元にあった森茉莉の貧乏サヴァランを適当に開いたら
ちょうど、三島由紀夫宛の書簡のページであった。

「ファンのお嬢さんの前に下さった真紅い薔薇が薔薇色の夕日をあびた枯れた葉の陰に血のような色になって、ピータア・オトゥウルの恐ろしい魅惑の眼のそばに首を垂れてい、モイラを好きになる天下家の下男のイメエジのジュリアの・ジェンマが私をモイラと間違えて凝と見ており、それらのものが私に怖がらないでお書きと言っております。一月四日 森茉莉」

とあるが、三島由紀夫に直接書簡を送れる身で、ほとんどのページを、こんな調子の文章で使い切れる彼女が羨ましい。

文豪相手に、自分をよく見せようとも、賢く装おうとも、気に入られようともしていない。

彼女は、やはり本当の贅沢を知っているのかもしれない。


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