三島由紀夫に会ってきた話
今日の夢で、彼と会ってきた。
そうそう、この声。
この声で彼は、しゃらしゃらと喋っていた。
口数は多くないが、寡黙ではなく、眼差しは美しい。
成熟した父性というのはこういうものかと思わせられた。
近所の生垣のそばで立ち話をして
何かただひたすらに励まされていた。
「また来るね」と一言言い残し
彼は、猫になってトコトコ去っていった。
また会える、絶対会える。
そんな確信を抱いたまま、目が覚めた。
3日まえに「音楽」と「潮騒」を古本で購入していて
まだ手に取っていなかったから、
「早く読めよ」と促されているのか。
起きてすぐ、枕元にあった森茉莉の貧乏サヴァランを適当に開いたら
ちょうど、三島由紀夫宛の書簡のページであった。
とあるが、三島由紀夫に直接書簡を送れる身で、ほとんどのページを、こんな調子の文章で使い切れる彼女が羨ましい。
文豪相手に、自分をよく見せようとも、賢く装おうとも、気に入られようともしていない。
彼女は、やはり本当の贅沢を知っているのかもしれない。