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第二章 01 セオリーを外れた地震

2004年の新潟中越地震、その年末のスマトラ沖地震を経て、2005年3月の玄界灘地震。
相次ぐ地震は、さらなる大きな地震につながるのでは。世の中の疑念はその度に再燃した。
また、新潟、玄界いずれも原発のリスクを否応なく突きつけられる現実的なケースとなった。
1986年のチェルノブイリ原発事故でニュースに接して、原発の危険性をはじめて意識し、原発推進は間違っていると考えていたが、日本の経済を支えるということでは不可欠な面もあると認めざるを得ない。。。むしろ予知は原発を抱える電力会社側にその必要性があるのではないか?
「地震は予知でき、少なくとも時間的な切迫があればわかるので、その時には停止しておくこともできる」。。。実際にそうできればチェルノブイリの事故のような大事故を地震によって被ることがなくなるではないか、と。市民の側には予知によって現実のものとしての備える意識が芽生え、電力会社は予知によって小さなリスクをとることで絶体絶命のリスクを回避できるはず。
この考えは予知の必要性に対して具体的なイメージとなり、原発を続ける必要があるとする経済界のニーズに受け入れられるものだと希望を抱いた。
地震の危険から反原発を唱えて煙たがられ、予知の内容も見てもらえぬままになるよりも、よほど実現性が高く思えた。

ブログの記録方法も手探りで進み始めていた。ブログを書き始めて間もなく、7/17日ごろに微動が出始め早速ブログに短い記録を付け始めた一行のみ。おおむねツイッターで記録する短さ。
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7/17 特徴的な揺れがほぼ規則的に感じられる。ときおり、小さく軋み音がする。注意すべき兆候。
7/20 規則的な揺れが感じられる。揺れはあまりはっきりしていない。(阪神・新潟中越のときははっきりとしていた。)引き続き注意して観察。
7/22 特徴的な規則的な微震がかなりはっきりと感じられる。揺れの間隔は30秒前後。ときおり部屋などの小さな軋み音が伴う。長く続くようなら大きい地震につながる可能性がある。引き続き注意して観察。
7/23 16:35震源地 千葉県北部 M6.0 深さ約73キロ ‥足立区で震度5強
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以上が、初めてブログを記録し最初の地震が発生するまでを書き留めたケース。このあとさらに微動が続き、8月6日に揺れが消え、ここから10日後、2005年8月16日11時46分M7.2宮城県沖深さ28キロの地震。宮城県で最大震度6弱を記録している。大型地震の最初のブログ記録となる。また続いて海外の大型地震の兆候も記録し、9/30 14:53の予測「海外の大きい地震の前兆である可能性が高い。北半球・インド以西 6.5~7と推測」として一週間後パキスタン北東部で10月8日午前8時50分M7.6の大型地震が発生。3万人を超える犠牲者となっていた。(日本人の小さな子の犠牲もあった)このあと11/15の東北沖M7.1地震でも兆候をつぶさに記録している。

ブログは軌道に乗った。しかし関東平野では非常に地震が多いので、微動を記録し地震が発生したとしても、その微動が本当にあったのか?微動があったと当てずっぽうに書いていれば地震が発生した、当たりましたといくらでも言える、という反論が出るのでは。こうした懸念もあった。
東京という重要な場所でありながら再現性の検討が難しくなり、かえって信頼性のない情報となって陳腐化する。。。厄介な状況だった。

ブログでは長い警戒の中にM6クラスにとどまる地震もあったりはするものの着実に効果が見えていた。2005年から2006年へと大きく地震があるたびにアクセス数も増えているようだった。そんな中、2007年、予知可能性への確信が打ち砕かれる地震が発生した。

その年も襖の鳴る音がして微動も出てくる局面はある。しかし何か一つの大きな地震に向かっているようなまとまりはない。
後から辿れば、あれもそれも兆候に見えなくもない、そのなかで2007年3月の能登半島地震が発生した。3月からの記録は以下の通り。

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3/1  現在襖がきゅきゅきゅと小さく鳴り続けては止み、という繰り返し。断続的。深部低周波微動と考えます。大地震の前兆ではないと判断しています。
3/6  日曜日の晩にかなり襖が軋んだのと週明けにドンと1回地震があった以外は静穏。不規則微動もありません。
3/7  ■M6.3インドネシア   2回地震があり70人以上の犠牲がでているとのこと。M6前半くらいの地震では遠方の地震の察知は不可能とわかりました。先ほど襖がきゅきゅきゅと鳴っていたがすぐに止んだ。
そのほか規則微動などはありません。
3/8  ■鳥島近海M6.0 深さは約140km 各地で震度1程度を観測した模様。これに関する前兆は、襖がキュキュキュと鳴った日があったのと
ちょっと沈むような感覚があったということにとどまります。・・・
3/9  ■ウラジオストク付近M6.2  500km 昨夜遅くに20分くらいのあいだかなり襖が激しくキュキュキュ・・・と鳴り続けていて・・・深発や深部低周波微動の頻発時期に襖の鳴る現象が多い傾向があります。やや活発ですが大地震の危険はないと判断しています。
3/10  沈む感覚が頻繁になる。規則微動かと思われる微動も断続的に軋みを伴って観察される。微動は継続的でないのですが今後の注意は必要です。
差し迫った危険はないと判断しています。
3/12  ぶよぶよと不規則微動。最大でM5クラス前半のものが頻発の予想。大地震の前兆はありません。
3/13  午後6:40ごろから30分以内。軋みもあり。24時間以内千島または台湾 M7前後の可能性もあり。規則微動が続くようであればもっと先に関東周辺も可能性。念のため要注意とします。
3/17  トン、と突き上げる感じがここ3日くらいある。でも規則微動は一時的だったようで今は静穏です。ときおり不規則微動が30分ほど続くときもありますが全体として大地震の可能性は薄いと判断します。引き続き最大でM5クラスのものは頻発しそうな流れ。
3/20  とはいえ一昨日は夜、かなり軋み音がしていたし昨晩は夕食中にどん、と突き上げるような揺れも。しかし大地震の前兆にはあたらないと判断します。全体として収束傾向。平常に戻します。
3/22  M4.1震度3深さ80キロ。(Hi-net)ひきつづき最大でM5前半までの地震は頻発の模様。大地震の前兆はありません。
3/24  19:15ごろから50~90秒間隔、継続時間は四秒弱。振幅が非常にゆっくりとして大きく阪神淡路の前のものと似ている。経過が気になります。
10日以上継続する場合要注意とし、その後停止した場合は警戒とします。
なお1日以内で止まっても台湾・千島その他同等の距離あたりでM6以上の地震の可能性はあると推測します。
■■3月25日9時41分 能登半島M6.9 震度6強

今から見れば、家鳴り、軋み音、突き上げなどの顕著な兆候が複数、
海外での被害地震や列島周辺のM6クラスの地震が相次ぐ状態。
そうした状況証拠から警戒できそうにも見える。
しかしそれまでのセオリーすなわち、微動が繰り返し、全くの静穏状態が20日近くあってから大地震、ということがここでは当てはまらず、気がかりとする微動が出て継続期間を置かずすぐ次の日に発生している。当時の判断の限界だったことが見えている。。。

どうして!他のケースとは異なる特殊な理由があるはず。
能登半島だけが、その兆候である微動を伝えてこない何か。
地質?波動の特殊さ?海域?特殊な例外事例として能登半島という地域をしばらく保留とする以外になかった。全く定まった兆候がないとなると物理的な法則は導けない。ある条件下では異なる挙動となるなら、いずれ説明可能になる。
この判断は、とりあえず前に進めるためには正しかったが、能登半島を特殊地域に追いやることで判断から外す結果となってしまっていたことに気づいたのは2024年の元日の能登半島地震の時だった。

このように、まだブログ記録で法則を見つけるにはせいぜい2年ほどの発生ケースは不十分だった。このペースであれば5年のうちに目処がつくのではないか。2007年の時点ではその見込みだった。
だがそれまでにいくつの被害地震で多くの人命が危険にさらされるのか。少しでも命が守られるなら、不確実ながらも根拠を示しつつ観察と情報発信を細々と続けなければ。そうしてブログを記録し続けていた。

一方でその当時、微かに疑念を抱いていたのは、日本ではスマトラ沖地震のような規模の地震の可能性はない、という専門家を含めた楽観視だった。
来るのか来ないのか。私は来るのではないかという考えだった。そうだとしたら必ず微動でその襲来を予知できるだろう、スマトラの微動が捕捉できるなら日本近海なら確実に兆候があるはず。それを知らせる人がいるのか?。。。自分以外に居ないのではないか?と。



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