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今の考えは「理解しているつもり」なのかもしれない。

「多様性」という言葉に対して、何をイメージしますか?

LGBTQ、家族のありかた、働き方、思想…
ひとそれぞれのイメージがあると思います。

今回は、朝井リョウさんの『正欲』を読んで考えさせられたことについて記録しておきたいと思います。

多様性について

多様性ときいて、まず思い浮かぶのはLGBTQ(性的少数者)ではないでしょうか。
著名人のカミングアウトや渋谷区発のパートナーシップ制度により、LGBTQの言葉自体は徐々に浸透してきたと思います。

また、家族のありかたや生き方を描いたテレビドラマや小説も多く、賛否はあれども「結婚して家庭を築く以外の生き方もあるよね」的な考え方がされるようになりました。

「多様性を認めよう」
「多様性を理解して、誰もが個性を発揮できる世界に」

こういったメッセージをよく耳にします。

個人的には、個々の自由は尊重されるべきだし、いろいろな考えを理解しよう!と軽く考えていました。


前置きが長くなりましたが、多様性について考えさせられたのが本作です。

「理解される」多様性は何が決めるか

多様性を考える上で、(言い方が難しいですが)従来の「結婚して家庭を築く」が多数派だとしたら、それ以外の生き方・価値観は少数派となりますよね。

多数派が少数派を認識するのは、少数派が声をあげる。

その声に続くように少数派が声をあげ、一つのムーブメントが起こる。

多数派が認識・理解する。

たいがいはこの流れで少数派の価値観が浸透し、(賛否はあっても)理解が進むのだと思います。

しかし、同じ流れが起こったとして、すべてが理解され得る少数派なのでしょうか?

本作では、現時点での少数派よりさらにニッチというか、ありていに言えば「法律・倫理的にどうなの?」という価値観を持った人物が多数登場します。

そう。

「多数派による多数派のための」法律、倫理がベースにある社会。

そこで生きる限り、そのベースから外れる価値観を持った人々は声を上げることすらできないし、声を上げても認められるとは到底思えないのです。

(今の法律をどうするとか、教育をどうするとかの話は一旦置いておきます。)

本作では以下のように言及されていました。

どんな人間だって自由に生きられる世界を!ただしマジでヤバい奴は除く。

少数派を理解することはもちろん大切です。
でも、

目に見えない少数派も存在すること

・法律や倫理とのバランスは難しいけれど、「どんな人間だって自由に生きられる世界」なんて簡単に叶うものではないこと

これらを忘れてはならないと強く感じました。

…………

「多様性を理解しています」
「いろいろな考えがあっても、私は寛容だから受け入れるよ」

優しくてプラスなイメージがあっても、
それでも、知らないうちに誰かを傷つけるかもしれない言葉。

自身の考えや信念は持ちつつも、過信せずにアップデートすることを忘れてはならないと思わせてくれた作品でした。


#読書感想文

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