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創作『月の記憶』

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創作『月の記憶』記録用

『月の記憶』

序章

はじまりは「ちり」だった

「ちり」が集まって

小さなカケラとなり

さらに大きな塊となる

やがて大きな衝突の中で

ボクは生まれた

以来、ボクはここから

ずっとキミを見ている

夜明け前

キミの産声は凄まじかった

灼熱のマグマを噴き出して

誕生のエネルギーを爆発させた

やがて大気と海が優しくキミを包み

すやすやと穏やかな寝息をたてる

そうそう

巨大な

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創作『月の記憶』の生い立ち

そうだ、絵本を描こう!

と、思ったのは数年前。

世界遺産の登録基準(ⅷ)「生命の進化や地球生成の歴史」について学ぶ中でインスパイアされた。

題材は、地球46億年の歴史と100億年後の未来。

太古の昔、アノマロカリスが、ダンクルオステウスが、イクチオステガが、ティラノザウルスが君臨した時代。

それぞれの時代の環境に適応したそれぞれの生命体があって、『豊かな地球』とはそれぞれに異なるものだっ

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創作『月の記憶』(1)

序章

はじまりは「ちり」だった

「ちり」が集まって

小さなカケラとなり

さらに大きな塊となる

やがて大きな衝突の中で

ボクは生まれた

以来、ボクはここから

ずっとキミを見ている

創作『月の記憶』(2)

夜明け前

キミの産声は凄まじかった

灼熱のマグマを噴き出して

誕生のエネルギーを爆発させた

やがて大気と海が優しくキミを包み

すやすやと穏やかな寝息をたてる

そうそう

巨大な隕石がおっこちた時は

全身を震わせて大号泣

あんまり暴れて泣くもんだから

ボクはキミが砕け散らないかと

ヒヤヒヤしたものだよ

いつしかキミは

その幼いカラダに

いくつもの小さな光を宿した

その小さ

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創作『月の記憶』(3)

はじまりの朝

幼かったキミも いよいよ

力強く輝きを放ち始める

一斉に芽吹く生命を

その腕いっぱいに抱いて

キミの育む生命は多様で豊かで

歓びに満ち溢れていた

若く力強いキミの躍動の中で

彼らは遥かなる広い世界へと

命を繰り返しながら

幾度も困難を乗り越えて

儚くも逞しく明日を繋いでゆく

創作『月の記憶』(4)

熱き白日

キミがすっかり成熟して

束の間 休息のとき

興味深い種が現れた

子孫を残すために生存する

それ以外のことに

大いに命を燃やすものたち

音を奏で歌い踊る

描き鮮やかに彩る

綴り紡ぐ

思考し技を磨き

自ら進化する

その歩みはかつてなく速かった

彼らの無駄だらけで

非合理的な営み

ひたむきな生への貪欲さ

ボクは彼らの『生き方』に

目を見張った

創作『月の記憶』(5)

黄昏

再び キミの躍動の時

これまでもそうだったように

多くの種がその変化の中で

滅び あるいは置き換わり

わずかに生き延びたものもあった

そしてある日

ボクは一斉に飛び立つ光を見た

まるで宙に吐息をついたように

淡くて どこか心許なく

それでも懸命に飛ぶ無数の光

やがて光は河のように連なって

ゆっくりと遠ざかっていった

その輝きがずっと続きますように

ボクは願った

創作『月の記憶』(6)

静かな宵

その日以来 

地上はずいぶんと静かになった

息づく生命はただひたむきに

命を繋ぎ繰り返していく

キミは相変わらず

澄んだ青い輝きを放ち続けたが

訪れた夜はますます深まっていた

キミの躍動も徐々に衰え

大地はカタチを変え

やがて動きをとめる

内なる熱が溢れ出し

青い輝きごと海を飲み込んだ

創作『月の記憶』(7)

終焉、そして…

真っ赤に燃えるその姿は

産声をあげたころのキミを

記憶から呼び起こす

キミは特別だった

この漆黒の宙の中で

キミほど鮮やかな光を放つ星を

他に知らない

キミほど豊かなの生命を育む星を

他に知らない

キミほど変化に富んだ星を

他に知らない

永い永い時をキミと共に歩んだ

本当に幸せだった

まもなくボクらの機能も止まる

太陽が全てを元に戻すんだ

今ボクらは

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創作『月の記憶』(8)

終章

『はじまりは「ちり」だった』

「これが最古の記録の冒頭です。我々の祖先がいくつもの惑星を転々とし、このコロニーに移住する遥か昔の記録です。我々のルーツの原初の惑星といえます。」

「ここには、故郷となり得る惑星を再生、あるいは新たに創造するためのヒントとなるデータが、膨大に蓄積されているのです。」

「よし。ただちに解析チームを立ち上げよう。」

「…それにしても。その原初の惑星で誕生し

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