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携帯電話料金値下げへの政府介入の是非

こんにちは、Renです。お久しぶりです。

菅内閣発足から少し時間が経ち、様々な政策を掲げている中、菅総理がかなり力を入れている政策の1つが、「携帯料金の値下げ」だと思います。

「世界基準で見て日本の携帯料金は高く、利益率も高い(20%ほど)、値下げの余地(4割下げ)が大いにある、利益を国民にもっと還元すべき」と菅総理は主張しています。

この裏には、携帯電話料金を下げないなら電波使用料を上げるぞというある種脅しのようなメッセージも隠れており、これを受けて、携帯大手3社は値下げに理解を示し、前向きに検討すると回答をしています。


またNTTはdocomoを完全子会社化すると発表し、タイミングがタイミングなだけに、菅総理の政策と関係があるのではなどと様々な憶測を呼んでいます。

そんな日本の携帯電話料金問題についてちょっと調べてきたので、ここにまとめたいと思います。

今回も前回の安倍政権のnote同様に、自分の情報整理noteになります。記事だけ読んでもらっても十分に勉強になると思います。どうぞご付き合いください。

◎日本の携帯電話料金は「高い」というわけではない

世界の携帯電話料金比較記事を色々読んだ結果、下記の記事が簡潔にまとめてあって、分かりやすかったです。​

記事内では日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国の6カ国のMNOを対象に調査を行なわれています。

MNOというのはMobile Network Operatorの略で、和訳すると「移動体通信事業者」。簡単言うと国の電波を借り、自社の基地局(設備)を通してサービスを提供している業者のことです。日本のMNOはソフトバンク、docomo、KDDI、楽天の4社です

もう一つMVNO(Mobile Virtual Network Operatorの略)という業種形態もあり、和訳すると「仮想移動体通信事業者」。これらはMNOから電波と基地局を借りてサービスを提供している業者を指し、日本でいうとmineoやワイモバイルなどが挙げられます。

今回調査の対象となったのは、前者のMNOの会社(※各国シェア上位3社)ということですね。

記事を読むと、日本の携帯料金は決して「高い」という訳ではなく、世界の中位程度。質に関しては世界トップレベル、4G接続率は約99%で日本より1000〜2000円安いヨーロッパ諸国に比べて10%ほど高い。ということが分かります。

ちなみに接続率の世界トップはオーストラリア、韓国、台湾で100%、次点でタイや日本などが99%、欧州の国は80〜90%、世界平均は71%となっています(2019年のデータ)。

これらのデータを見ていくと、この「接続率」が料金を決める1要素なのだと思います。接続率を上げるためには、基地局などの通信設備の拡充、維持やメンテナンスなどに膨大な費用が掛かるため、料金を高くせざるを得ないということなのかなと。あくまでも仮説ですが...

以下、平成30年8月に総務省が発表した携帯電話基地局の数のシェアランキングです。

1位 ドコモ 39% 34万1900基
2位 ソフトバンク 28% 24万2400基
3位 KDDI 18% 15万5200基
4位 UQコミュニケーションズ 7% 6万3500基
5位 Wireless City Planning 7% 6万3000基

基地局が増えれば増えるほど利用者が滞りなく安定的に通信できるようなるわけですが、実際、基地局数は伸びているのかというと、2013年時点でのドコモの4G/LTE基地局は5万5300基。その後、数字を伸ばしていき2017年には約18万5000基と4G/LTE基地局を増やしているようです。他の2社も同様に数を大きく伸ばしています。

ちなみに、基地局は設置場所やタイプによって大幅に値段が変わるのですが、一つ月額3〜20万円ほどかかるのだそう。1つ3万円として、それが約35万台あるドコモの場合、月に最低でも105億円ものお金を基地局の維持費として支払っているということです。年間にすると約1200億円ほど。

それに加えて、国の電波使用料(2015年の電波使用料は、NTTドコモ201億円、KDDI131億円、ソフトバンク165億円)、人件費、オフィスの賃貸料などなどかなりのコストが掛かっています。その中で利益をばんばん出しているのは凄いです、そら菅総理も利益還元しろと言いたくなる気持ちもわからなくはありません(笑)

先ほどの記事では調査対象が6カ国のみでしたが、下記記事では100ヵ国以上が対象になっており、世界のインターネット利用者のトレンドや対象国の通信速度などを見ることができます。

日本の通信回線は「遅い!」とよく耳にしますが、グラフを見ると決して遅くはなく、世界上位レベルだということが分かります。しかし、ここ数年通信速度が伸びていないことも事実のようです。韓国やアメリカ、中国などは通信インフラにかなりの投資をしています、その目的は国際競争に勝つためで、結果がグラフの中の数字にも出ています。この意識が日本の通信業者にはないと感じます、5Gの技術開発も一歩遅れていますしね。

ここまでグダグダと書いて来ましたが、僕が伝えたいのは、携帯電話料金が下がるのは消費者にとって良いことだが、単純に海外と比べて高いから下げろ!というのは違うということです。世界に誇れる品質で、それに合った料金設定になっているということを理解していただきたいです。

もし携帯料金が下がっても、サービスの質も落ちますじゃ話になりません。最新技術への投資を再考しかねず、これからの5G、6G時代にさらに遅れを取る可能性もあります。

◎タイトルに対する自分なりの答え

僕がこの記事のタイトルに答えるとするならば「非」です。

まずもって、携帯キャリアは営利企業なわけで、利益を追い求めることが目的です。また「電波は国の公共資産でそれを借りているのだから...」とおっしゃっていますが、貸し出す際に審査をして使用を許可したのは国ですし、民間企業に対して政治家が稼ぎすぎだから値下げしろというのはあまり適切ではないのかなと思います。

それに、国が電波使用料を上げたとして、果たしてそれをどのように国民に還元してくれるのでしょうか。気になります。

僕個人的には、今の携帯料金は下がらなくても良いのかなと、それよりも料金を据え置いてサービスにより多くの付加価値(決済、銀行、フリマ、インフラサービスとの連携)をつけていく方向性を目指して欲しいです。

今の消費者にはMVNO(mineoやワイモバイルなど)という選択肢もある中でMNOを選んでいる。より安い価格を求めるならMVNOを選べば済む話です。なので政府は携帯料金の値下げよりもMVNOにより多くの帯域を確保させるなど、MVNOを選ぶ人を増やすように努力すべきなのかなと、そのほうが市場競争も盛り上がると思います。


5Gの覇権はもう中国とアメリカに取られてしまいました。国が今の状況に目を瞑って5G導入や6Gへの開発投資を促進し、日本が次の時代に国際競争するような準備をできるかどうか。そこに対する日本の本気度が今回の政策の行方によって測ることができるような気がしています。


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