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さよならシャボン(10) 線路


シュッポ、シュッポ

今日もレールの上を走っている。

始まりも終わりもいつも同じだ。

定日、定時、定常運転。

シュッポ、シュッポ

時々小さなトラブルがあっても、そのトラブルさえも恒例行事のようなもので、対処法も事後処理も、全て決まっている。

レールの上を、定められた中で走り続けることに変わりはない。

今日も明日も明後日も、走る毎日。

シュッポ、シュッポ

それがどれだけ続いていたのかも分からなくなった頃。

レールを走っているのか、レールに走らされているのか、レールが追い掛けてきているのか、分からなくなった頃。

シュッポ、シュッ…

その日、レールの感触が突然変わった。

なんでも、線路の切り替えを間違えたらしい。

見たことない景色、嗅いだことのない空気。

でも、新鮮さなんて微塵も感じなくて、ただただ、知らない感覚に怯えるだけだった。

怯えながら、その日が終わるのを待つだけ。

シュッポ、シュッポ

結局、線路切り替えの間違いはあの日だけだった。

あの時、確かに感じていたのは恐怖だったのだけれど。

夕陽の沈んでいく湖の光景が、焼き付いて離れないのはどうしてだろう。

傍にある、レバーを倒してしまえば、またあの湖を見られるのだろうか。

シュッポ、シュッポ

定日、定時、定常運転。

なにも変わらない日々。

今日もレールの上を走っている。


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