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眩暈(掌篇小説)

 誰も彼もが『羊たちの沈黙』について語り、誰も彼もがグレン・グールドについて語る。みたいな書物たちに疲れたので、石の上に腰を下ろしてじっと陽の光を浴びた。人を殴ったり殺したりしても(そのままの意味でも、比喩としても)なにも思わなければもっと楽に暮らせたのかもしれない。ただ、そういう人を羨ましいとも思わない。足もとから蟻が上ってくるのを肌に感じながら何時間か過ごしたが、悪くなかった。

<了>


明日か明後日あたりに公開しようと思ったのですが、眠れないので更新しました。

追記:タイトルを「眩暈」に変更しました。

漫画も新作を公開しました。
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