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『あなたの愛人の名前は』の読書感想文

こんばんは、水瀬綾乃です。
少しずつ読んでいた島本理生さんの『あなたの愛人の名前は』を読み終わりました。

6つの短編を彩る人たちが、少しずつ重なり合って連なっていく短編集。

最初のお話の『足跡』は、友人の澤井の「旦那さん以外に抱かれたいと思ったことはないの?」という突拍子もない問いかけから始まります。

同じ団地の隣の部屋に住んでいた幼なじみと結婚した千尋は、夫との幸せな生活を送りながらも、自分の中にずっと足りないと感じていた何かを見つけられずにいます。

そんな彼女の心の隙間は真白との時間で塗りつぶされていくと同時に激しい後悔を生むのです。

真白のことは澤井によってもたらされたものだったけれど、そこを訪れると決めたのは千尋であり、訪れないという選択もできたはず…。

千尋の夫に真白のことを知られない限りは、2人の幸せは続いていくのでしょうが、水にぽつんとひと粒落としたインクのように、ぼんやりとやがて仄暗い影を落としていく、その後ろめたさは、ずっと心に残るのではないでしょうか?

3つ目と4つ目の話の、『あなたは知らない』は、女性側の『俺だけが知らない』は、男性側の視点から描かれています。

この2つも、やはり暗い雰囲気の話ですが、一度思いきると女性は強いな…って思うのです。

表題作の『あなたの愛人の名前は』は、予想していたストーリーとは違い、いい意味で予想を裏切られました。

ここでも他の短編の中に登場する人たちが、それぞれの赴くままに動き出して、ある意味自由であり、そこがまたいい味を出しています。

しばらく時間をおいて読み返してみたら、また違った感想を持つのかもしれません。



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