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考えさせられる賞状

先日、自宅に第57回宣伝会議賞の賞状が届いた。

僕は、中高生部門の2課題で協賛企業賞に選んでいただいた。予定では3月初旬の贈賞式に出席するはずだったが、昨今の世情を鑑みて残念ながら中止になってしまったので、自宅で賞状を受け取ることになった。

宣伝会議賞は「広告コピーに賞が送られる」

宣伝会議賞は日本最大級の公募広告賞で毎年秋に開催されている。50を超える協賛企業が提供した課題に向けて、コピーやCMプランを書いて応募するという形式で、グランプリは100万円を手にする。プロアマ・職業・年齢問わず応募できるのだが、一般部門で一次審査を通過できるのは1/100本、ファイナリストに残るのはわずか1/20000本となっている。

僕がこれを知ったのは中学3年の頃だ。

本屋で「Amazon特集」と書かれた表紙が気になり「月刊 宣伝会議」をパラパラと眺めていた時、第54回宣伝会議賞のレポートが書かれているページを見つけた。広告コピーに賞が送られるということをその時初めて知った。

その後、YouTubeに掲載されていた贈賞式の動画を見て、驚いたことがあった。賞状に書かれていた言葉だ。

賞状の言葉は「ちょっと変わっている」

賞状の言葉はこうだ。

時代の風を深く呼吸し、
言葉と発想の光に変えた才能を高く評価し、
ここに大きな賞賛をおくります。

一般的な賞状によくある「あなたは○○において、頭書の通り優秀な成績を収めたので……」みたいな文面ではない。

この言葉は長きにわたり宣伝会議賞の審査委員長を務めていたコピーライター、故・眞木準さんによるものだそうだ。贈賞式の動画を見ながら、いかにも広告賞らしい、そして受賞者を讃えるのにふさわしい、やわらかで温かみのある素敵な言葉だと感じたことを覚えている。

「この賞状を自分も受け取ってみたい」

高校に入り、宣伝会議賞に気が回らないほど忙しかったが、賞状の存在は頭から離れなかった。「賞状を受け取ってみたい!」それが一番のやる気となり、第56回に初めて中高生部門へ応募した。高校2年の秋、「来年は受験だから中高生部門に応募するのはこの一度きりだ」と思い制作を頑張ることにした。何か文章を書くことは好きなので、コピーを考えるのは楽しかったが、想像以上に難しかった。自分では面白いコピーができたと思っても、課題が求めているものと合っているか、商品やサービスの魅力を伝えられているかどうか不安になることが多かった。

20数本応募し、4本が一次審査を通過し個別審査で1票以上いただいたものの、入賞することはできなかった。そのうち1本は2票をいただいたものの落ちてしまった(ちなみにその課題はプロアクティブ。同じ課題で中学2年生が書いた「もうイクラ軍艦とはよばせない」がグランプリに輝いた)。

とても悔しかった。一つも通過しなかったのなら簡単に諦めはつくはずだった。受験勉強に集中するつもりだった。でも一次審査を通過できたことで、「次回はもしかして……いや次回こそ......」というわずかな可能性も頭をよぎった。自分の好きな「書く」ことで認められたいとも思うようになっていた。

結局諦めがつかず、受験勉強を疎かにしないよう高校3年秋の2ヶ月間集中して取り組んだ。第57回の応募本数は前回を大きく上回り100本以上になった。

賞状が自分に問うてきた

大学入試の最中、協賛企業賞を2課題で受賞したと事務局から連絡をいただいた。体が震えるほど嬉しさがこみ上げてきたし、受験で沈みかけていたマインドが一気に上向いた。やっと自分の好きなことで認めてもらえた思うと自信が持てた。

贈賞式で直接賞状をいただくことは叶わなかったが、自分も受け取ることができた。しかし、中3の頃と感じ方は違った。

時代の風を深く呼吸し、
言葉と発想の光に変えた才能を高く評価し、
ここに大きな賞賛をおくります。

すごく素敵だ。自分がいただくことができて感動する。でも、どこか引っかかってしまう自分がいた。

本当にこの言葉に値するコピーが書けただろうか。

審査員の方や協賛企業の方に選んでいただけたことは素直に嬉しい。今の自分の100%の力を出しきって書いたコピーが評価されたのだから。でも「このコピーで本当に商品やサービスが魅力的になるか?」「人の心を掴むコピーか?」と問われると100%の自信はない。後の祭りだが、「もっといいのが書けた」とも思う。

今回、協賛企業賞を受賞して、「書く」という趣味に自信が持てた。応募するなかで、広告やメディアにすごく興味を持った。でも、コピーライターなど「何か物を書く人間」としてはまだまだ経験が足りていない。

賞状をいただいて感じたことを胸に、自分で考えて工夫しながらもっと書き続けて、人の心を掴む言葉を見つけたい。自分が好きなことをもっと多くの人に伝えたい。

そして、今度は宣伝会議賞の一般部門で入賞して、贈賞式で賞状を受け取りたいと思う。素敵な言葉は、何度いただいても嬉しいものだから。

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宣伝会議賞の応募にあたり、中村禎さんの『最も伝わる言葉を選び抜く コピーライターの思考法』(宣伝会議)を読んで、ものすごく助けられました。広告の魅力に気づき、もっと深く知りたいと思わせてくれた本です。これからも何度も読み直したいと思います。本当は贈賞式で直接お礼をさせていただきたかったのですが......この場を借りて感謝申し上げ、ご紹介させていただきます。コラム『コピーライターへの道』は中村さん自身の話を通じてコピーライターのリアルな世界も見ることができます。

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この記事の公開日は、5/18「ことばの日」。賞状の”ことば”を多くの方に知ってもらえればと思い、#ことばの日をつけさせていただいたところ、「5.18は、ことばの日」さん(kotobanohi518)のマガジンに追加していただけたようです。ありがとうございます......!記事下から、マガジンに登録されている他の方のnoteも見てみてください。


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