3行日記（蠅叩、鳩時計、ふいご）

十一月十三日（月）、晴れ。
立冬、地始凍、ちはじめてこおる。

夕方、商業施設を歩いていると、頭にバンダナを巻いて、黄緑色の蠅叩を持っているおじさんを見かけた。黒マジックで、「地球人／自由／理想国家」と書かれた蠅叩で、周りに見えるように垂直に掲げられていた。おじさんはトイレに吸い込まれていった。

夜、肉じゃが、野菜サラダ、パイナップル。チャックの散歩、きょうは寒い。七度だったがチャックはなんのその。区役所の方へ行き、いつもだったら右か左に曲がるのだが、きょうは真っ直ぐ進んで商店街へ抜けた。妻の実家には、先日、おばあちゃんの米寿祝いで買ってもらった、鳩時計が届いていた。プレゼントの包装をどきどきしながら開けると、「米寿記念、祖母」とのし紙に書かれていた。昔ながらの鳩時計ではなく今風のもので、鳩は扉の奥に隠れておらず、常に丸見えだ。十時を刻むと、ふいごの空気の音が十回鳴った。

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