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日曜日の感傷

 すっかり陽が長くなった日曜日の夕方は、まだまだ何でも出来そうなオレンジ色をしている。だけど白いレースカーテンを大きく揺らす風が半袖のTシャツには少し肌寒くて、春と夏のちょうど真ん中みたいなにおいがした。
 青とオレンジが逆さに広がるベッドの上、網戸越しに広がるモザイクの世界をぼんやりと眺める。

 懐かしい夢をみて目覚めた日曜日の夕方は、決まっていつも寂しくなる。君の事が大好きで、君から大切に愛されていたあの子に会いたくなる。

 今度はちゃんとするから。
 ちゃんと生きるから。
 あげられなかったものを、ぜんぶ、あげるから。
 君が頑張れない時には私が頑張るから。
 今度はきっと、大丈夫だから。

 そう言って君の首根っこ目掛けて抱きつくと、君は静かに、柔らかく両腕を回した。諦めたように笑いながら。

 夢から覚めても残る優しいぬくもりは、気持ち良く晴れた土曜日に干したばかりの布団のぬくもりでしかなくて、夢はただ夢でしかない。

 感傷のタイムリミットはこの陽が沈むまで。向かいの窓に映るオレンジ色が、濃い藍色に染め替えられたら、今夜もあの子はあの日に帰ってゆく。


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