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【随筆/まくらのそうし】 梅干

 梅は成るが、赤じそは植えていないので、白梅干しを作る。

 七月下旬、匂い出す前の青梅をもぎ、洗い、ちまちまと楊枝でなり口を取る。楊枝の先がすぐに潰れてしまうので、今年こそ金属製を手に入れておこうと思うのだが、そう思うだけで十数年。ただ、実は、これは赤じそも同じこと。

 ともあれ、塩で漬け、水が上がり、あとは日干しの時を待つ。

 このタイミングが難しく、三日は続けて干したいところで、天気予報とにらめっこ、カンカン照り、かつ、なるべく夕立も避けたいところ。

 日差しの元、汗をかきつつ、すだれを敷き、梅を並べる。くっつかぬよう、一つずつ、朝に干して、昼に裏返し、夜は梅酢の中に戻す。最後の日には一晩干して、ようやく白梅干しの完成だ。

 この梅干し、赤じそが入らないので、できあがりは薄い赤茶色であるが、何を隠そう、日差しを存分に浴びる間は、これが何とも美しい、仄かな赤に発色する。

 その色を目にするだけでも、塩に漬けただけの梅が、太陽にふっくらと和らいでいくのを見ているだけでも、梅干しというものは、どうにも作り甲斐があるものだ。

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