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数年前の長雨のこと

 誇張でなく、丸々一ヶ月という期間、雨が降り続いた年があった。

 梅雨という季節ではあれど、あまりにしっかり降り続き、それでも一週目は楽観視、二週目には不安になり、三週目には疲れ果て、四週目には達観し、一向に勢いの衰えぬ、ざあざあざあざあ降る雨を、感心しきりで眺めていた。

 そして、とうとうその雨が止んだ朝、東京の親から「雨は大丈夫か」との電話、何かと思えばニュースのトップ、近くの高速道路が崩れ、通行不能になったという。

 一ヶ月もの激しい雨が降ったとて、そこに住まぬ人ならば、雨がニュースになった途端、突然雨降り、高速の崩れる、面白いことだと思いつつ、この世のニュースにならない物事の多さに憂うとき。

 冗長ながら、この岩の多い山ならば、地盤は丈夫、崩れることもなく安心で、ただその大雨の被害として、車の座席が黴びたという、嫌な思い出は残っている。

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