【エッセイ】 馬鹿な虫

 果実を取るのに木を切り倒すのは馬鹿のやること、そんな馬鹿は人だけであると思いきや、虫にもそんな馬鹿がいた。

 チョッキン虫などとも呼ばれる、これがネキリムシである。

 これが野菜の苗の茎をチョッキン、切り倒し、苗を駄目にしてしまう。

 トマト、大豆、タマネギ、カボチャ、何でもござれ、植えた苗を、出た芽の茎を、とにかくチョッキンチョッキン切り倒し──もちろん、ただ切るだけでなく、茎を食べているのだが、それにしたってチョッキンと、切ってしまえばそれまでで、食べ物は枯れてしまうのだから、一体何がしたいのか、秘めた自殺願望か、それとも苗に親でも殺されたのか、ただただ馬鹿なだけなのか、それらの気持ちは分からぬものの、苗を切られた農家の心は、察するに余りある。

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黒澤伊織@小説
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