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ホタルブクロとホタル

 ホタルブクロの白い花が咲く頃、黒に胸の赤い虫がつーと、低く飛んでいる。

 これが飛ぶというよりは、宙を移動しているというほうが近いもので、細長い体を縦にして、虫の中ではのろのろ運転、人が歩くと同じ速度であちらへこちらへ、ゆっくり進む。

 その飛び方を見るうちに、ふと蛍に似ていると思いつき、調べてみればやはり蛍、夜行性の強い光を持つ、いわゆる蛍ではないものの、昼行性で弱い光を放つこともできるという種類である。

 ホタルブクロという、釣り鐘のようなその花は、昔、子供らが蛍を捕まえ、その花かぶせ、灯りに見立てたことから付いた名であると、そういうが、いまもホタルブクロが咲く頃に、蛍がつーと飛んでいく、その風景が残っているということには、感慨を禁じ得ない。

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