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【エッセイ】 海辺の貝拾い

 海に行けば貝拾いが好きで、ずっと浜辺を歩いている。

 最近は、海洋酸性化のせいだとか、どこへ行っても貝殻が少なく、そればかりか小さかったり、割れたりするものばかり、たった数十年でこれほど様変わりするものなのか、それも海ばかりではないのだから、空恐ろしいような気さえする。

 以前は、いまや土産物屋でしか売らないような、大きな貝殻が転がっていた。

 耳に当てて海の音を聞くような、大きな白い巻き貝に、巨大カタツムリが入っていたようなもの、ベニガイの大きく、透き通ったものが、割れることもなく打ち上げられて、イカの骨に、王冠のようなウニの殻、ただアサリのような貝の、手のひら大のものなどは、ありふれていて見向きもせず、珍しいもの、大きいものばかりを拾い、帰ったものだった。

 そうして帰って真水で洗い、兄弟間で開かれる拾った貝の交換会、これが太古の昔から、人が貝を財とした所以と思うと面白く、同じく拾ったヤドカリを、大人がこっそり逃がすにも気づかずに、夏休みは過ぎていくのだった。

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