小説 『何が、彼女を殺したか』 （１）
note公式テーマ「#家族の物語」応募作品。ある一人の少女が殺された後、残された遺族たちの再生の物語です。全２１回にわたり、お届けします。
▶︎目次
小説 『何が、彼女を殺したか』
序章
１９ＸＸ年９月６日夕刻、ある一人の女の子が殺された。
彼女の名前は、雨ヶ谷真紀。この年の春、小学校へ上がったばかりの１年生で、三つ年上には、由紀という姉がいた。
父親の洋介は食品会社に勤めており、母親の美希子は専業主婦で、真紀が小学校へ上がるのに合わせて、パートを始めたばかりだった。
彼女を殺したのは、村野正臣という、大学生の男だった。
その犯罪の残酷性と反省の見られない態度から、第一審は彼を死刑としたが、最高裁では無期懲役が言い渡され、その身柄は拘置所から刑務所へと移送された。
それから２５年後。
彼女が死んでしまった世界で、いまも村野正臣は刑務所の中で生きていた。
それは被害者遺族たちも同じだった。生きている彼らもまた、あるいは復讐に燃え、あるいは愛をもって犯人を赦し、あるいは断絶を前に途方に暮れながら毎日を過ごしていた。
これはそんな彼らの物語である。死んでしまった彼女以外のための、生き続ける人間たちの物語。
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