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山の蛸

 今年は来るのが遅かったか、ようやく網戸に巣を張ったコガネグモ、朝からどうやら様子がおかしい、巣の中心に陣取るはずが、そこを外れ、落ち着かぬ様子、と思えば、網をびょんびょん揺らしてみたり、足を奇妙に動かしてみたり。

 気になりながらも席を外し、しばらくしてから戻ってみれば、巣にあるのはクモというより、細長いゴミ屑、どうしたことかとよくよく見れば、どうやら脱皮をしている様子、尻の糸からつり下がり、最後に足を抜く場面、すらりと長い足を垂らし、しばし、風に吹かれて乾く。

 尻が上、足を下に垂らしたその様子、八本足も相まって、まるで海のタコのようだと思ううちに、クモは乾き、足を曲げ、元の形へ戻って、巣の中心に堂々と居る。

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