短編小説 『怠惰なりんご』
あら、それはごめんなさい。でも、わたくし、りんごはとても嫌いなの。いいえ、味の好き嫌いじゃないわ。そうじゃなくて何て言ったらいいのかしら……そう、その存在がね、わたくしと相容れないのよ。あなたも褒めてくださったでしょう、年老いても衰えないわたくしのこの容姿。ええ、このスタイルを維持するために、どれほどの努力が必要か、あなたにも分かり初めて来た頃かしら? 何もせずとも、つやつやと張りがあった時期を過ぎて、些細な不摂生がすぐに肌に出る年頃。そうなって初めて、皆、わたくしに気づく