ADHDに競馬場は難しすぎた。
今日は天皇賞秋を観戦するため、東京競馬場に行ってきた。
人生初の競馬場だったので、かなり心を躍らせて電車に乗った。
府中競馬正門前駅という競馬のためだけに作られたであろう駅に向かう。
今日の入場者数は6〜7万人らしいので、中はかなりの人がいる。
東京ドームが満員でも5万5千人しか入らないことを考えると、競馬が娯楽としていかに愛されているかがわかるだろう。
第2レースから参戦する予定だったので、時間的に少し余裕がある。
まずは中に入って色々と観て回ることにした。
中は球場のように屋台型の飲食店ばかりかと思っていたが、しっかりと座って食べられるレストランやカフェも多くあった。
昼になって混みだす前に食べておこうということで、友達にペッパーランチを奢ってもらった。
飲食店以外ではもちろん券売機が至る所にあったが驚いたのは喫煙所の数だ。
なんと喫煙所が50メートル置きくらいに設置されていた。
とても令和に存在する施設とは思えない多さである。
ギャンブルをする人間はタバコを吸っているという偏見は、おそらく偏見ではなく正確に関連性があるのだろう。
後は無料でお茶と水を入れられる機械が至る所に設置されていた。
こういった場所では大抵高い値段で飲み物を販売していることが多いので、これはかなり良心的である。
感心しているとそろそろ第二レースの時間になったので人生初のパドックを観に行った。
パドックというのは、次のレースで出走する馬がスタッフに連れられながら歩いて周回する場所だ。
近くで馬を見ると迫力があって楽しいので、競馬初心者の彼女とデートに来ても盛り上がると思う。
馬を見た後は馬券を購入しに行った。
いつもはアプリから馬券を買っているので、場内で買うのは初めてだ。
こんな感じの紙にマークシート式で馬の番号を塗りつぶし、機械に通すのである。
俺の全財産は1200円しか無かったため、友達に10000円貸していただいた。
第二レースは、前日からかなり予想していただけあり、複勝が無事的中。
10000円が15000円になった。
その次の第3レースも固い複勝に10000円を賭け、これも11000円に。
計6,000円を獲得したので、これだけあればやっていけるだろうということで10000円をすぐに返済した。
往復が疲れたので第4レースは見(※ケン)することにした。
(※予想だけして馬券を買わないことらしい。知ったばかりなので使ってみました。)
第5レースは新馬戦というやつで、まだ走ったことのない馬達が走るレースである。
データも無く、血統とかはあまりよくわからないのでパドックで雰囲気がいい馬を買うことにした。
いいと思ったのは堂々と歩いていた3番のマッスルバック、リラックスして優雅に歩いていた4番のミーハ、ベテランのような落ち着きがあった10番のジオセントリックである。
オッズを見ると、10番のジオセントリックは11頭中1番人気だったが、3番のマッスルバックは8番人気、4番のミーハは11番人気であった。
ジオセントリックは血統もいいし、ルメール騎手というすごい方が騎乗するので人気だったのだ。
この3頭でいい感じに買おうと思ったが、パドックの3周ほど回った時である。
4番のミーハがうんこを漏らした。
新馬戦なので緊張してパドックでうんこを漏らすことはよくあるらしい。
しかしうんこを漏らした途端恥ずかしかったのか、あれだけ優雅に歩いていたミーハが少し暴れだした事に俺は冷めてしまい、4番は買わないことにした。
これが蛙化現象というやつなのだろうか。
4番は外し、3番と10番のワイドで1000円分だけ馬券を買った。オッズは24倍だ。
(ワイドというのは決めた2頭がどちらも3着以内に入ったらいいやつ。)
10番は下馬評通り1位、そして人気のなかった3番マッスルバックも見事3位に入り、24000円を獲得した。
これで俺の所持金は29000円。
名実ともに大金持ちになり、彼女への借金返済とディズニーデートも視野に入る。
だがそれでも天皇賞の予想には自信があったので、天皇賞にはその時点の全財産を投入することに決めていた。
それからはいちごアイスや、バナナジュースのメガサイズを飲んで豪遊しつつ、適当に3レース賭けて17000円まで所持金が減ってしまう。
11レース目が天皇賞。
その前の9レースと10レースも賭けるつもりではあったが、人が多すぎて携帯の電波が入らない。
なにも情報を調べられないのでここは諦めて、早めに天皇賞の馬券を買って人が集まりすぎる前にゴール前の見やすい場所を抑えることにした。
天皇賞の俺の本命は3番人気の9番プログノーシス。
1番人気の最強馬イクイノックスも3着には確実に入るだろう。
俺の購入馬券は7-9のワイドを15000円分と、9番の単勝を2000円分だ。
投票用紙のマークシートを塗りつぶし、券売機に入れた。
そして出てきた購入馬券を見ると、9番イーサンパンサーと書かれていた。
間違えて第10レースを買ってしまっていたのである。
友達に聞いてみたが、間違えたからといって払い戻しとかはできないらしい。
急いで買ってしまったこの馬達を調べると、7番の馬は13頭中8番人気、9番イーサンパンサーに至っては13番人気であった。
イーサンパンサーは弱すぎて単勝オッズが280倍。
ワイドもちょうど280倍くらいになっていた。
終わりだ。
友達にも絶対に当たらないと言われた。
だが、もし当たれば400万くらいになる。
大体俺の3年分の年収だ。
3年間、無職で生きていけるのだ。
おそらく7万人の東京競馬場でイーサンパンサーの単勝を買っていたのは俺くらいだと思う。
だが俺は恥を書いてでも、周りからどう思われようとも、全力でイーサンパンサーを応援した。
イーサンパンサーは、後方集団から更に離されてのビリだった。
俺がしくしく泣いていると、不憫に思った友達が「これで賭けてこい。」と10000円を貸してくれた。
「ありがとう!」とその10000円で同じように単勝とワイドを買おうと思った。
だが、元手は先程とは違って10000円だ。
その中の何割かのワイドだけが当たったとしても大してプラスにはならない。
それならばと馬連を10000円分購入し、取り返そうと決めた。
(馬連というのは決めた2頭が順番を問わず1着2着になったらいいやつ。)
7-9の馬連。
これが俺の購入馬券である。
天皇賞が始まる直前。
国歌が流れたり、天皇陛下が手を振ってくれたりし、東京競馬場はこれまでのレースよりもかなりの盛り上がりを見せていた。
そしてテレビで聞き覚えのあるファンファーレが鳴り響く。
ゲートが開き、馬達が走り出した。
圧倒的に強かったのはイクイノックス。
1分55秒2というタイムは、なんと芝2000メートルの世界レコード記録を更新したらしい。
そして俺の本命馬、プログノーシスは3着だった。
ワイドなら的中していたのに、馬連を購入していたため外れてしまったのである。
というか、あの時間違えて第10レースを買ってしまわなければ的中していたのである。
もしあの間違えた馬券が的中していれば返ってきたのは42000円。
借金も返済した上で、かに道楽にも行けた。
だが、今の俺に残ったのは更に増えた借金だけ。
愚痴と涙が止まらなかった。
そもそも紙で書くとかいうシステムがよくないと思う。
俺のようなADHDが間違えずに記入できると思っているのだろうか。
もっとデジタル化するべきだ。
今どき小学生でもタブレットで授業しているというのに、JRAは時代遅れすぎる。
そして俺は病気すぎる。
友達はその後のレースも賭けると言っていたので、俺は喫煙所で肺がんになるまでタバコを吸うことにした。
2本吸ったところでうんちがしたくなってトイレに行ったので、肺がんにはならなかった。
俺が今、noteを書けているのはそのおかげである。
うんちに救われたこの命。
今後はまた劇場に来てくれるお客さんを笑わせるために使いたいと思います。
競馬場自体は楽しかったので、お金に余裕がある時にまた誰かと行きたい。
ひとまずは借金返済のために来月はバイトを頑張ると決めたのだった。
おしまい。
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