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スカイとマルコ(10)・神様がくれたもの

「そんなカッコつけたこと言っていたくせに、サスケの奴、時枝さんに飼われた途端、メロメロになってさぁ。どっちが守られてんだかって感じの5年間だったんだよ。死んでからも、『ピーターは良いよな。生まれて4ヶ月ぐらいで時枝さんと出会えったんだろう?俺なんて、出会うまで6年ぐらい掛かって、そして、一緒にいれた時間は5年ぽっちだぞ。不公平だと思わないか?』って、ずっとグチグチうるさいからさ、だから、今も時枝さんの側にできるだけいさせてやっているんだ。君からしたら、ずっと、サスケが羨ましそうというか恨めしそうに側にいるから、鬱陶しいと思うけどさ。きっと、そのうち、君に任せていたら大丈夫って思えて、僕みたいに、必要な時だけ、時枝さんの元に出て来るようになるから、もう少し、我慢してくれるとありがたい。」

ピーターも本当は時枝さんの側にいたいだろうに、一生懸命、お兄さん役をしているようだ。

「僕は全然気にしないよ。ピーターがいても、サスケがいても、僕は見張られてるなんて思わないよ。こんなに犬たちに愛されている時枝さんって人がますます好きになるだけだよ。」

実際、マルコは、時枝さんのことを時間が経てば経つほど、好きになっている。初日に会った時は、神様から与えられた”課題”や”修行”みたいな気持ちもあったけど、今は、ちょっと違う。この人といて、幸せだなぁ、という気持ちが自然と湧いてくる。

「マルは本当に手間の掛からない子ね。前の2匹はすごかったから、今度も覚悟していたのに、少し拍子抜けぐらいね。でもね、本当のことを言うとね、私ももう歳でしょ。もう、マルぐらいじゃないと、飼えなかったと思うのよね。私の人生、その時々にぴったりのわんこが与えられて、本当に幸せだわ。マル、うちの子になってくれて、本当にありがとう。」

時枝さんは、マルコを”マル”と名付けた。まん丸の真っ黒い目と鼻、そして、性格も気性も全て花丸だからだそうだ。

僕は、この世界ではマルとして一生懸命生きる。時枝さんと一緒に。
神様が、「反省して来い」と言って、僕に与えたのは、課題や修行ではなく、もしかしたら、チャンスなのかもしれないな。なんのチャンスなのかは、きっとそのうち分かるだろう。

マルコは、たくさんのことを考えているけど、でも、周りにはぼんやりしているようにしか見えない。それは天界でも下界でも一緒。でも、

「ねぇ、マル、あなたは、本当はすごく思慮深いわんこじゃない?ふふ、そんな風に思う私って、本当に年季の入った親バカね。」

そんなことを言う時枝さんをマルコは尊敬している。
僕は、本当に幸せだ。
マルコはつくづく神様に感謝した。

でも、この時、マルコはまだ神様が彼に与えた本当の修行の意味を知る由はなかった。



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