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スカイとマルコ(5)・守っていたのはどっち

翌朝、お腹が空いて目が覚めた。
あたしの身体はあたしより逞しいみたい。

昨日の食べ残しを食べようと、銀のボウルを探したけど消えていた。寝ている間に片付けられたみたい。
がっかりして、水を飲んで我慢していたら、いつもより早い時間にコウタ君が現れた。

「お腹、空いただろう?昨日、食べてないもんな。」

コウタ君、なんで分かるの?

あたしはコウタ君が置いてくれた、ご飯をむしゃぶり食べた。
すごく美味しかった。お腹がいっぱいになるって、なんて、幸せだろうと思った。

そんな様子をしゃがんで、ニコニコしながら見てくれていたコウタ君に、お礼と思って、手をペロリと舐めた。

コウタ君は、「昨日は、辛かったね。でも、よく頑張ったね。友達の幸せを願えるって、すごいことだよ。」と言って、あたしを抱きしめてくれた。
人間から初めて抱きしめられた。悪くない。マルコとは違うけど、安心する。コウタ君はあたたかい。良い人間って、ホカホカしているんだね。わんこと一緒で、ホカホカしているんだね。

あたしは、コウタ君が大好きになった。

「な、コウタ君は良い人間だろう?彼は、犬の気持ちが分かるんだ。」
隣の柵のおじいさんわんこが満足気に言った。

「うん、そうだね。あの人はホカホカする。そういえば、おじいさんは、人間を包む膜みたいなもの見える?あたし、最近、それに気づいたんだけど。コウタ君は柔らかい太陽みたいな色で、いつも同じ色。小林さんだっけ?あの見た目、ムスッとして怖そうなおじさん。あのおじさんは、他の人間がいる時は、冷たい雨の色なんだけど、人間がいなくなって、あたし達だけになると、晴れた空みたいな色になるんだけど。あと、最近、よくあたし達のお世話をするミサちゃんって呼ばれている若い女の子、あの子の色はコロコロ変わる。あたしは、ちょっと苦手なんだ。」

おじいさんわんこは、目を細めて私を見て、うんうんと頷く。

「お嬢ちゃんもようやく見えるようになったか。あれで、大抵、どんな人間か分かるんだ。わしら犬を苦手だったり、嫌いな人間は、わしらを見た途端、嵐の夜みたいな色になる。緊張しているんだろうな。酸っぱいような嫌な臭いも出すよ。」

ふーん、そうやって、犬は人間を見分けているのか。だから、色んな人たちがあたし達を見に来た時、「この人に貰われたい!」って思って、一生懸命アピールしたり、知らんぷりしたりするのか。

「そういえば、お嬢ちゃんと一緒にいたマルコだっけ?あの子は、どうやら、最初から色んなものが見えたり、分かっていたみたいだね。」

そう。マルコは大抵、ぼーっとしているけど、でも、本当はなんでも分かっていたんだ。
あたしが、色んな悪戯を次々にやらかすのを、ニコニコしながらも、「スカイ、そろそろ、止めておいた方が良いよ。神様に見つかっちゃうよ。」って、言っていたのも、あれはびびっていたわけじゃなく、分かっていたからなんだ。最後に、あたしが面白がって、下界に向けて、おしっこをして、それから、ウンチもしようとした時も止めていたっけ。
「スカイ、そこまでしちゃダメ。」って。
そしたら、案の定、神様がやってきて、、、。あたし達は捕まっちゃったんだ。

本当は、マルコはあの時、逃げられた。でも、あたしはうんちをしようと、もう踏ん張っていたから、逃げられず、マルコも一緒に捕まって、同罪になったんだ。

あたしを守っていたのは、マルコだったんだね。

あたしは、マルコに会いたくって、寂しくって、クーンクーンと泣いた。


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