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ランナーの話:「OKちゃん」中編

変わった理由は簡単だ。膝を故障したのだ。

もちろん、ランナーに故障はつきものと言えばそうだけど、その度合いにもよる。上手に付き合いながら、走り続けられるケースもあれば、もしかしたら、一生走ることが無理になるケースもある。頭の良いOKちゃんだから、当然、自分が今、どんな状態なのか、客観視できていただろう。だから、少しの間、いつものルーティーンから外れることにしたようだ。

走ることに依存しているランナー程、故障時はストレスが溜まる。

自分が休んでいる間、どんどん体力、走力が落ち、折角、今まで積み重ねてきたものが、台無しになってしまうのではないか?

ライバル達がどんどん力をつけ、自分は置いていかれるのではないか?

ネガティブ思考が頭を駆け巡り、居ても立ってもいられなくなり、完治する前に走り始める。だけど、当然、その後、悪化する。そして、更に、完治が遅れる。それで、ますます、ストレスになる。

こんな悪循環に苦しむランナーは結構多いと思う。OKちゃんだって、全く、ストレスや焦りがなかったとは思わない。特に、あそこまで走りを追求してきた人間が、そう簡単に走れない時間を受け入れられる訳が無い。

だが、OKちゃんは、そんなストレスを他人に見せることなく、愚痴を吐くこともなく、淡々とその時期を過ごした、

わけじゃなかったのだ!!

なんと、OKちゃんは、その時間、ローラーブレーダーに変身したのだ!!

え、まじですか?

と、私、黒リスは、最初、目を疑いました。サマーストリート(夏の時期にNYCのパーク街が歩行者天国になる週末がある。)で、ヘルメットと膝パットをつけてローラーブレーダーで滑るOKちゃんを目撃した時、噂には聞いていたが、やはり本人を目にすると、その驚き度合いはすごいものです。

手ぬぐいがヘルメットに代わり、ローラーブレードを履いて、妙に背が高くなったOKちゃんは、快走ランナーとしての面影はゼロ。観ている方が、不安になる滑りのレベルです。

しかし、本人は相変わらず飄々と、穏やかな表情で、この新たな挑戦を楽しんでいるようにさえ見えました。

そして、OKちゃんの挑戦はそれだけじゃなかったのです。

(つづく)



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