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神宮外苑まちづくりに関する事業者説明会は新国立競技場で!

はじめに

 2023年6月29日。神宮外苑再開発認可取り消し訴訟の第1回公判が東京地裁103号法廷で行われ、原告団長のロッシェル・カップ氏と青山1丁目住宅自治会長の近藤良夫氏の2人が裁判所で意見陳述をし、記者会見の模様も含め各マスコミでその模様が報道された。
 その報道に対抗するかのような形で、翌日の6月30日。今回の神宮外苑再開発の事業者である三井不動産株式会社、宗教法人明治神宮、独立行政法人日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事株式会社の連名(以下事業者と略)で『神宮外苑地区まちづくりに関する説明動画の公開等のお知らせ』が公開された。(注1)

神宮外苑再開発地区の範囲と港区の要望書

 そもそも、神宮外苑は渋谷区、新宿区、港区の三区にまたがっており、今回の第一種市街地再開発事業に該当する区域が多い(注2)港区長武井雅昭氏が2023年に入ってから神宮外苑地区第一種市街地再開発事業代表施行者三井不動産株式会社代表取締役菰田正信氏に対して2月20日に『神宮外苑地区第一種市街地再開発事業に係る説明会の開催について(要請)』(注3)を、3月28日には『神宮外苑地区第一種市街地再開発事業に係る情報発信について(要請)』(注4)という2つの要請書を出している。

赤色部分とc地区が今回の事業の範囲
A-8-b地区、A-8-C地区、A-9地区が港区。それ以外の赤部分は新宿区

 前者の『神宮外苑地区第一種市街地再開発事業に係る説明会の開催について(要請)』は「多くの方々により一層ご理解いただくため、事業計画の内容や既存樹木の保全・移植・伐採の方針、銀杏並木の根系調査の結果などについて丁寧に説明していただきたく、御社主体の説明会の開催」を求めるものであり、「説明会の開催に当たっては、より多くの方々に情報が行き届くように、参加者対象者や開催時間などを限定しないような、運営を工夫して」ほしい旨を要望している。


『神宮外苑地区第一種市街地再開発事業に係る説明会の開催について(要請)』

 後者の『神宮外苑地区第一種市街地再開発事業に係る情報発信について(要請)』は以下の5つの要望項目が具体的に書かれている。
1 令和5年2月20日付港街再第345号で要請した説明会の開催については、確実に実現してください。
2 区民等が気軽に質問でき、意見を出せる場として、オープンハウス型の情報発信拠点を本事業の地区内藤に設置して下さい。
3 本事業に関するホームページに質問受付フォームを設け、区民等から質問や意見に答えるとともに、これまで寄せられた質問や意見を含めて、施行者の回答や見解を公表して下さい。
4 銀杏の根の調査結果などホームページ等で公表する情報は、根拠等を明らかにした上で、区民等が理解しやすいように、平易で正確な表現としてください。
5 今後、各種申請等の手続を行う際は、ホームページやプレス発表などを用いて、事前に正確な情報を丁寧に発信し、区民等の不安の払しょくに努めてください。 
 事業者は『神宮外苑地区まちづくり』というホームページを作り(注5)、情報発信をしてはいるが、情報発信の仕方が十分とは言えないと港区長が考えている様子が、2つの文章から窺えよう。

事業者の説明会の疑問点

 従って、事業者による6月30日付の『神宮外苑地区まちづくりに関する説明動画の公開等のお知らせ』は上記にあげた港区の2つの要望書、特に中身が説明会の開催に関する指摘が多い『神宮外苑地区第一種市街地再開発事業に係る説明会の開催について(要請)』を踏まえたものと思って、読んでみて驚いた。驚いたことは多々あるが一番の驚きはこの部分である。引用する。

(引用開始)近隣の皆様を対象に、プロジェクトサイトの説明動画および資料と同内容の説明会を 7 月 17 日(月 祝)・18 日(火)・19 日(水)に開催いたしますので、対象の方へのご案内状を 7 月 3 日(月)以降にご自宅・ 法人事務所等へ投函させていただく予定です。説明会へのご参加には、投函されるご案内状の本紙が必要となります。(引用終了)

 この文書を見ただけでは近隣の皆様の範囲がどこまでの範囲なのか不明である。各種報道では(注6)緩和された高さ制限190メートルの2倍の360メートル四方が説明会の参加対象であるとされているが、今回の説明会は建築に関する説明会なのか。『神宮外苑地区まちづくりに関する説明動画の公開等のお知らせ』という題名から判断するならば、建築に関する説明会の基準を当てはめる必要はないと考えることもできると思うが。なぜ近隣の皆様がどの範囲なのか。そしてその根拠を説明会の案内に示さないのか。このような事業者の姿勢は「正確な情報を丁寧に発信」したとは思えない。
 そして「説明会へのご参加には、投函されるご案内状の本紙が必要」とこの期に及んで説明会の参加資格を絞る方向で考えているとは。港区長の2月20日要望書では「参加者対象者や開催時間などを限定しないような、運営を工夫して」ほしいと書いてあるのに、なぜ「投函されるご案内状の本紙が必要」と範囲を限定するのか。その理由として事業者はこのように説明する。

(引用開始)本計画につきましては多くの方々からご関心をいただいており、参加範囲に制限を設けない形式での開催も検討いたしましたが、皆様のご懸念や疑問に対して丁寧に説明をさせていただくため、「説明動画の公開および 質問受付と回答」と「近隣の皆様を対象とした説明会」という形式をとらせていただきます(引用終了)
 皆様の懸念や疑問に対して丁寧に説明するために、参加者の範囲に制限を加える。まったく意味が分からない。港区長は「より多くの方々に情報が行き届くように、参加対象者や開催時間などを限定しないような、運営を工夫して」下さいと要望しているのに、要望に逆行するような行為を事業者は平気で実行しようとする。あまりにも神宮外苑地区の該当区を軽視しているとしか思えない。

 最後に、この説明会の会場がどこであるか分からない点を指摘する。このようなことを書くのは神宮外苑の説明会にも拘わらず、神宮外苑周辺で説明会を開催せずに、最寄り駅が永田町駅の東京ガーデンテラス紀尾井町で説明会をした前科があるからだ。

今回の事業者と同じ三井不動産、明治神宮、JSC、伊藤忠商事が開催した2021年8月の説明会。
神宮外苑はJR千駄ヶ谷、信濃町、地下鉄国立競技場、外苑前、青山三丁目と5駅使用可にも拘わらず、最寄り駅が永田町の場所で説明会を開催。その理由は不明。

 「説明会へのご参加には、投函されるご案内状の本紙が必要」と説明会の参加者を神宮外苑周辺に限定しておきながら、説明会の会場を神宮外苑周辺に設定しないようなことがあれば、説明会開催は形だけのものと思われても仕方がない。

新国立競技場で説明会を

 そこで、2013年の神宮外苑地区地区計画当初からこの問題に関心を持つ一市民として事業者に対し、提案する。それはこの説明会を新国立競技場で開催してみてはどうだろうか。突拍子もない提案ではなく前例はある。2012年11月27日の神宮外苑地区地区計画に関する企画提案書に関する地元説明会である。証拠として『企画提案書提出に係る地元説明質疑応答概要』を提出する。

『企画提案書提出に係る地元説明質疑応答概要』

 場所として国立競技場体育館が記載されている。そして国立競技場で説明会を開催するメリットは大きく2つある。まずは、収容人数を気にしなくてもよいから「投函されるご案内状の本紙が必要」という説明会の参加対象を入口で絞る必要がない。
 神宮外苑を広域避難場所として指定している渋谷区、新宿区、港区の住民はもちろんのこと、神宮球場を使用しているヤクルトファンや歴史的経緯から優先使用権が確保できるか心配している東京六大学関係者、神宮第2球場の廃止で代替地をどうしようと考えている東都大学野球や東京都高校野球の関係者、神宮球場でイベントしていたイベンターやアイドルファン、秩父宮ラグビー場を使用していたラグビー関係者、軟式野球場利用者やテニスコート利用者、外周を走るランナーなど、神宮外苑への利害関係者と思われる層が参加できる可能性がある。これこそが「より多くの方々に情報を行き届
」らせることにつながるのではないか。

 次は質疑応答に関して時間の余裕を作ることができる点である。2012年の際は午後7時から午後9時までの予定が、22時15分まで延長されている。このこれは説明会場が主催者であるJSCの持ち物で、「まだ質問があるじゃないか」だとか「延長すればいいじゃないか」との声に柔軟に対応できる条件があったからであろう。
 質疑応答に手をあげる希望者が何人いようが、会場の使用時間を盾に途中で打ちきり。そのことについて、説明会の参加者が不満を持って帰る。こういうことの積み重ねが事業者に対する不信感を生む一因につながっているのではと、反省をする気はないのだろうか。


注1ー神宮外苑地区まちづくりに関する説明動画の公開等のお知らせ
jingugaienmachidukuri_news_20230630m15-01.pdf

注2ー出典は『新宿区地区計画⑱ 神宮外苑地区 地区計画』

注3ー『神宮外苑地区第一種市街地再開発事業に係る説明会の開催について(要請)』setumeikaiyoseibun.pdf (city.minato.tokyo.jp)

注4-『神宮外苑地区第一種市街地再開発事業に係る情報発信について(要請)』johohassinyouseibun.pdf (city.minato.tokyo.jp)

注5ー神宮外苑地区まちづくり (jingugaienmachidukuri.jp)

注6ー複数の報道があるが以下の毎日新聞の記事が詳細である。
外苑再開発で説明会 380メートル圏住人に 17~19日事業者 /東京 | 毎日新聞 (mainichi.jp)




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