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【読書メモ】オンライン脳 東北大学の緊急実験からわかった危険な大問題(川島隆太)【#66】

この本で行われた実験に関する記事を読んで、衝撃を受けたので実際に本を読んでみました。とても読みやすく、内容も興味深いので、あっという間に読み終わりました。一部煽っているようなところもあるように思いますが、おそらく意図的に使っている表現だと思います。それくらい、内容が衝撃的です。特に小さなお子さんを持つ人は絶対に読んでおいた方がいいと思います。

●スマホやパソコンによる「オンラインコミュニケーション」は、情報を伝達できても心が通い合わず、対面によるコミュニケーションで自然に生じるような互いの共感・協調・協力関係などを、うまく築くことができない。
●「スマホやパソコンなど 双方向型のデジタル機器を長時間ーー概ね毎日1時間を超えて使っている子供たち(幼児や小中高高生)」は、それほど使っていない子供たちと比べて、確実に学力が低くなっている。デジタルTVなど一方向方型でも、双方向型ほどではないにせよ、必ず悪影響が生じる。
●スマホを長時間使っている子供たちの脳は、大脳灰白質(大脳皮質)と大脳白質の発達が遅れる。毎日の使用が3〜4時間以上の子供では、ほとんど発達が止まっている。
●スマホを長時間使っている子供たちや、彼らと同じようにデジタル機器を使っている大人たちには、自尊心の低下、不安や抑うつ傾向、鬱状態といった精神的・心理的な問題が生じることが多い。
●医学的に認められた診断ではないにせよ、「スマホ依存」「ゲーム依存」などと呼ばれるような過剰な使い方をする人の脳の反応は、物質使用障害(薬物依存症や中毒)と診断された人の脳の反応に似ている。

オンライン脳より抜粋、一部改変

実験の詳しい内容や手順が書かれていますので、この抜粋以上に衝撃を受けると思います。

印象的なのが、オンラインでの会議は、ぼーっとしている時と脳波が同じということと、一方向型より双方向型の方が脳に悪い影響があるというところでした。

せっかくオンライン会議をしても、ただモニターを見つめてぼーっとしている時と脳波が変わらないということは、情報を得るだけなら文章で送ってもらった方が時間の無駄にもならないし、脳への悪影響も少ないということですね。なので、対面でできないならメールでお願いします!というのも、そんなに悪いことではなかったのだなと思いました。

一方向型というのは、テレビや映画のような受け取るだけのもので、双方向型というのが自分でも作業が必要なものです。情報を調べたり、文字を読んだり、打ち込んだりすることです。余談ですが、紙の辞書で調べてしばらくしてからテストをすると半分くらいは思い出せるのに、オンラインのウィキペディアで調べた後にテストをすると1つも思い出せなかったというエピソードは、かなり納得しました。実際に自分でも経験があります。オンラインで調べたものは、後で思い出しにくい気がしていました。

双方向型の方が、脳の広い範囲に悪い影響を与えているという結果は、テレビを見ながら、疑問が出てくるとスマホで調べてしまっているので、少し反省しました。確かに、スマホに目が行ってしまうと、調べているようでもストリーなどが頭に入ってこなくなるし、情報も途切れ途切れになっているし、言われてみると良くないなと納得しました。

最後に少し救いがあるのが「オンライン脳」になっているからといって、回復しないわけではありません。適切な使用を心がければ、少しずつ脳が回復していきます。適切な使用とは何か?それは本書に書かれていますので、じっくり読んで取り組んでみてください。まずは、週末はデバイスをできるだけ使わない。とか、ベッドの中では使わない。などのようなデジタルデトックスが良いかと思います。

オンライン脳とは直接関係ないのですが、不安や自己肯定感の低下に関して、2011年の3・11東日本大震災の調査が非常にびっくりしました。このときに、子供たちの「自己肯定感」を見る項目のスコアがガクンと下がったようです。その後も調査が続けられて、いつ元の状態に戻ったのかというと、8年後の2019年だったそうです。小学1年生の子供が中学2年生になるまで、不安感や自己肯定感が回復しないというのは、彼らの将来に大きな影響を与えることになっていると思います。そして、コロナ禍の2020年の夏の調査で、東日本大震災の時のように「自己肯定感」のスコアが再びガクンと下がっていたことが、今後どれくらい影響を与え続けるのかは想像もつきません。

川島先生が警鐘を鳴らしているようなことが本当に起きるのかわかりません。ただ、危機管理というのは、常に最悪を想定しておかないと意味がありません。そういう意味で、本書は身近に置いておいて、油断した頃に、たまに読み返すのがいいと思います。

おわり


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