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10年振りの気象平年値更新の話/気候変動の傾向を読む

天気予報で「平年並み」とか「平年よりも高い」と言う言葉を聞いたことがあると思います。この平年並み、つまり平年値が、2021年5月に10年振りに更新されます。そこで、平年値がどのように変化するのかを紹介します。

※写真は最近、空き地にたくさん咲いているアカツメクサです。

【はじめに】

気象の平年値が、2021年5月19日に10年振りに更新されます。下に①旧平年値と②新平年値の定義を記します。

①旧平年値(5月18日以前):1981年〜2010年の観測値の平均値
②新平年値(5月19日以降):1991年〜2020年の観測値の平均値

要するに、西暦が20*1年になると(一桁めが1になると)直近の30年の平均値に更新される、ということです。ここで、大事なことは、10年たって気温や降水量、降雪量等の平年値がどう変わるのか、ということです。

【平年値が変化する主な項目】

(1)気温 : 全国的に0.1〜0.5℃上昇(但し、1地域のみ低下、後述)
(2)降水量 : 夏の西日本、秋と冬の太平洋側で10%程度増加
(3)降雪量 : 多くの地点で減少
(4)桜の開花 : 多くの地点で1〜2日早まる
※気象庁HPより引用

【平年値が変化しない主な項目】

(1)台風の発生数、接近数
(2)梅雨入り時期、梅雨明け時期
※気象庁HPより引用

【補足と解説】

気温は日本全国で上昇しています。気温上昇が比較的大きいのは、中部地方、関東地方、東北地方で、春から夏の季節です。これらの地方は年平均で0.4℃〜0.5℃の気温上昇ですが、東京、水戸、熊谷では3月と7月が+0.7℃、仙台では6月と7月が+0.7℃と特に高くなっています。但し、岡山だけは年平均で0.4℃の気温低下となっています。これは、2015年に観測地が街中から郊外へ移転したためだそうです。つまり、街中の観測地は都市化の影響により郊外よりも気温が高くなっているということです。

降水量は年間で3〜4%程度の増加ですが、季節・地域によっては減少もみられます。春の西日本と夏の東日本太平洋側で5%程度少なくなりました。減り方が顕著なところでは、3月の宮崎が旧平年値に対し86%(新平年値÷旧平年値)、那覇と大分が88%、8月の静岡が74%、横浜が84%、銚子が87%等です。一方、夏の西日本、秋と冬の太平洋側では10%程度増加しました。増え方が顕著なところでは、12月の高知が旧平年値に対し142%、徳島が141%、大分が137%、8月の佐賀が128%、高松と下関が124%、10月の徳島が136%、和歌山が132%、岐阜が129%となっています。

降雪量は多くの地点で減っています。これは、気温上昇により雪が雨になりやすくなったことが要因のひとつになっているようです。顕著なところでは、金沢が旧平年値に対し56%(新平年値÷旧平年値)、長野62%、新潟64%で、山形、盛岡、秋田、青森、札幌では20%程度減りました。

桜の開花日が1〜2日早まる、というのは最近の早い開花日のイメージからすると日数が少ない気がしますが、次回の2031年更新時には更に早まるだろうと思います。

台風の発生数、接近数は変化無しですが、勢力の強い台風が増える傾向になるのかどうかを注視する必要があります。

梅雨入り、梅雨明け時期も変化無しですが、梅雨末期の集中豪雨時の降り始めからの総雨量増には要注意です。

【まとめ】

10年振りの気象平年値更新の内容をよく見ると、気候の変化を読み取れる可能性があります。気温の変化、降水量の変化、降雪量の変化、桜開花日の変化等を見ると、やはり、傾向として地球温暖化の影響が現れているように思われます

気象庁のHPでは、気温上昇の要因について、①温室効果ガスの影響②数十年周期の自然変動の影響③都市化の影響の3つを挙げています。これらの影響を定量的に評価しないと温室効果ガスの影響を正しく評価することはできません。しかし、今回の平年値更新の内容を見ると、温室効果ガスが気候に影響している可能性は非常に高いと思います。次回2031年の平年値更新時には、更に顕著な傾向が現れているかもしれません。