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砂の金貨(瞑想日記)

どうしてまだ、生きているんだろう。

イソギンチャクは思った。

ネオン色の触手を伸ばしても届かぬ水面を見つめながら。

もう一回、もう一回

外側へ行かせて

外で息ができなくなってもいいの
ここにいるのは、いないのと一緒

居場所はわたしが決めたいの
ここにいるのは、死んでるのと一緒

そうしてイソギンチャクは砂になった。


どうしてまだ、生きているんだろう。

珊瑚は呟いた。

生きていても搾取され続けることに溜息を漏らしながら。

繰り返し、繰り返し

反芻して

あなたが歌った詩のほうが
わたしより何倍も美しくて、悲しい

あなたはなぜ死んでしまったのか
わたしのつまらない価値より、美しいのに

そうして珊瑚は砂になった。


どうしてまだ、生きているんだろう。

砂は考えた。

波の向くまま身を寄せてただ流れることにつかれていたから。

キラキラ、キラキラ

あの星が降って来ればいいのにな
そしたら砂も、キラキラ、キラキラ

輝けるかもしれないと、思った。

星は宝石のように輝くが
砂は砂糖のように同化するだけ

ちっぽけな存在に、生きる価値などあるのだろうか。


どうしてまだ、生きているんだろう。

少女は絶望した。

銀貨がなく、食べるものも着るものもない、裸の少女。

「優しさは馬鹿をみる」と人々は言った。
しかし少女は誠実だった。
パンを分け与え、着るものも与えた。

寒い、寒い

けれど
それで死ぬならいいと思った。

どうしてまだ生きているんだろうと思うくらいなら
わたしの命をも分け与えたかった。

ケーキのピースを切り分けるように
少女の黄金は貧しい子供たちのもとへ渡った。

砂は星になり、金貨になった。

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