こころは泡沫に消えて

最初に感じたのは浮遊だった。

疲れた身体に伸し掛かる重力を感じない。
水に浮いたかのような浮遊だった。

でも水ではない。
これは空だと悟った。

だって仰向けの身体の天井に、水があるのだから。

天球の水は、青いシャボンを漂わせながら虹色に揺らめいた。
まるで何か生々しい動物のようであり、逆に無機物のようでもある。
心があるようでいて、しかしなく、自由意志を持つ無機物。

まるでわたしのこころが、
規則的で、ずるいものに感じてしまう。

透明な空に包まれて、自由なのに、
あの澄んだ青の方が、とてつもなく神秘に見えてしまう。

あの雄大で、なにもかも満たされる、あの泡沫にくらべたら。
わたしはなんて小さくて、虚無であろうか。
ずるくて、ずるくて、人間なのだろうか。

それを見て、ひとすじの涙が溢れて、こぼれた。
それは透明なしずくになって、やがて泡沫となった。
わたしから出た青は消えて、ほんとうの青と同化したのだ。

角度によってシャボンは、虹色だったり、黄金に輝いていた。
これは光の反射ではなく、自ら輝いていた。
わたしの裸の身体は空の中で透明に透けて、真っ暗なところに沈んだり、浮かんだりを繰り返していた。

だから星が金貨になって服やパンを恵むのではなく
わたしが星になってしまったのではないかと思った。

衣服を取って裸になっても、寒くもないし、あたたかくもない。
髪の毛だけは、しなやかに空にたなびいて、光っているのだった。

「ああ、神さま。
わたしは天空にいるのか、海の底にいるのかわかりませんが
もし叶うことなら、青の中に同化したいのです。

もし魂とやらが星に近い存在であるなら
わたしは星座のように空にあげられるよりも、空に融けたいのです。
オーロラが融けるところでも、氷山が融けるところでもかまいません。

シャボンでまもられているわたしの身体を、最終的には青いところへ融かし
また炎の中に集められるまでは、そこで漂っていたいのです。

青い天球の、そのシャボンの中に浮かぶ、おおきな目の、その中へ
わたしをあなたの目の中へ、瞳の奥へ、いれてください。」

わたしがそう願うと、天球はすこし笑って、空を振動させた。
そうしてわたしが好きなものの視点を奪った。

たとえばアザラシのぬいぐるみ。
だいすきなミュージシャン。
空の中の、まぼろしの恋人。
そして、もうひとりのわたし。

そのほかにも、虫や魚や動物や植物が
わたしのおぼろげな意識の中に色鮮やかに混在した。
すると幾分か青の感覚は薄れて、身体に痛みを感じるようになる。

全身を縫い付けられているような痛み。
身体が重い。息ができない。
肺を退化させることは今宵もできなかったようだ。わたしは目覚めた。



午前四時。
そんな瞑想を見た。
感覚としては「見せられた」ようでもあるし、ただのわたしの架空の物語かもしれない。

有機物が無機物に変わったり、
かたちあるものが消えて行ったり、
その逆で浮いていたものが戻ってきたりと、中々リアルだったので記録として残しておく。

ところで、いらない脂肪を落として筋肉に変えて身体を軽くしたら、かなり飛びやすくなった。
そして帰りもスムーズになった。シックスパックの理想的な使い方である。まずは筋肉から。

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