ライター歴5年、私の採用広報インタビューの書き方
こんばんは。フリーランスライターの黒木です。
私は、現在2社で広報PR、2メディアで採用広報(やそれに類する記事)のライター、2メディアで編集のお仕事をしています。
この中で一番経験が長いのが採用広報のインタビューです。
社員インタビューはもちろん、時には経営レイヤーのインタビューも担当し、採用だけにとどまらない、インナー/アウターブランディングのための記事を執筆をしてきました。
また同時に、編集者として採用インタビューをライターさんと二人三脚で手掛けることもあります。
今日は、ライター・編集者として、私が意識しているポイントをまとめてみました。少しでも、採用広報インタビューに悩む方のヒントになれば幸いです。
※今回は「採用広報インタビュー=社員インタビュー」と定義しています。
準備編
インタビューの目的を握ろう
「採用広報インタビュー」と言っても、その目的はさまざまです。
会社(あるいはブランド・サービス)のファンを増やしたい
応募者数を増やしたい
潜在的候補者の認知を獲得したい
インナーブランディングを充実させたい
などなど。まずは、その記事が「誰に届いてほしい・読んでどんな気持ちになってほしい・読後にどんな行動を起こしてほしい」のかを明確にしておきましょう。
とりわけ、あなたが外部ライターの場合は、担当者が課されているKPIも確認し、それを達成するためにどんな記事を作ればいいのかまで考えられると、単なる受発注の関係を超えた関係性を築くことができるはずです。
企業理念やパーパスを理解しよう
インハウスライターや広報PRであれば、ここは嫌というほど染み付いていると思いますが、外部ライターとして仕事をする場合は一番大事にすべきポイントかと思います。
とはいえ、一朝一夕に理解し、自分の言葉として咀嚼できるようなものではありません。まずは担当者にどういう経緯でそのパーパスやミッションになったのかを聞いたり、社員のSNSをひたすらウォッチして「この行動は、あのバリューのことかな?」など考えたり、自分もその会社の一員であるように、MVVやパーパスへの理解を深めるようにしましょう。
インタビュイーの情報にはできるだけ目を通そう
これは言わずもがななHOWです。掲載インタビューがあまりに多い場合は、担当者に最低でも読んでおくべき記事を聞いてみるのもいいでしょう。反対に、一つもインタビュー記事がない場合は、SNSやWantedlyなどを探してネトストリサーチしたり、ポートフォリオを取り寄せるなど、できるだけその人の情報に触れる工夫をしてみてください。諦める前にできることは必ずあります。
質問リストはインタビューの1週間前までには送ろう
これも最低限やるべきことの一つ。インタビューに慣れている方はもう少しギリギリ(3日前)などでも良いですが、慣れていない方だと、回答を考える準備期間が必要です。
自社メディアに掲載する場合は、他媒体との被りはあまり気にしなくて良い(と個人的には思っている)ので、基礎情報から深掘りしたいことまでを、網羅的にリストにしておくといいでしょう。
加えてやっておきたいのが、質問リストと合わせて、インタビューの目的も一緒に送ること。「エンジニア採用のためのインタビュー」と「プロダクトのファンを増やすためのインタビュー」では、同じ質問でも答えが違ってくるので、事前にすり合わせができていると、インタビューがスムーズになるはずです。
インタビュー編
時間配分をざっくり決めておこう
例えばもらっている時間が60分の場合、その中で写真撮影もしないといけないのか否かで、実際の可処分時間は大きく変わります。
大体の場合、初めの5分でインタビューの目的や趣旨を再確認、10分くらいかけてお互いの自己紹介とアイスブレイク……これですでに15分が経過しています。
もし時間が足りなくなった場合に、どの質問を削るか。逆に、どんなに時間がギリギリでもこれだけは聞いておきたい質問はどれか。時間配分と同時に、質問の優先順位も考えておくようにしましょう。
無理にアイスブレイクしようと頑張るのをやめよう
「はじめまして」の人とアイスブレイクするのは難しいですよね。特に、相手がインタビューに慣れていない人だと、お互い緊張して、緊張の連鎖が生じることもしばしば。
なので私は無理にアイスブレイクしようとしません。ただし、「すみません、私ライターなんて職業をしているのに、ものすごい人見知りで、今口から胃が出るくらい緊張しています」と素直に伝えます。すると、相手も「自分も緊張してて……同じですね笑」となんとなく和やかな空気に。
加えて、「うまく話そうとか、まとまった内容を伝えようと思わないでください。思いついたことをそのままお話いただければ、ライターの私がいくらでもいい感じにしますので!」と必ず伝えます。
インタビューはうまく話してもらうよりも、その人らしい言葉で話してもらうことのほうが大事。よそ行きの言葉はいらないということを伝えるだけで、相手の緊張もほんの少しほぐれる気がします。
メモを取ること<目の前の人
「取材のとき、メモってどう取りますか?」
駆け出しのライターさんからよく聞かれる質問です。実は私は取材中にほとんどメモを取りません。全く取らないことが多いくらいです。
なぜか。メモを取ると、メモに頭を持っていかれて、話に集中できないから。
これは人にもよるかと思いますが、私は話に集中し、その人がどんな表情で、どんな言葉で、どんな声色で話しているかをつぶさに観察します。その人のキャラクターを記憶する感じ。
もし、私と同じようにメモを取るとインタビューに集中できないと悩んでいる方は、一度メモを取らない勇気を出してみるのもおすすめです。
とにかくたくさん「why」をぶつけよう
小さい子ってとにかく「なんで?」を連発しますよね。「なんでお花は咲いてるの?」「なんで空は青いの?」「なんで?」「なんで?」「なんで?」
インタビューが一問一答になりがちな人は、子どものように、一つの回答に対して最低一つ「なんで?」を聞き返してみてください。
また、分からない用語が出てきたら素直に聞きましょう。「勉強不足と思われるかな」「分からないって言うのは失礼なんじゃないか」そんなふうに思うかもしれませんが、あなたが分からないことは読者も分からないこと。「素人質問で恐縮ですが……」と聞けば、大抵の人は好意的に教えてくれるので大丈夫です。
「ポジ」だけではなく「ネガ」も聞こう
とりわけ社員インタビューの場合、その会社の「いいところ」を中心に聞くと思います。でも、第三者から見ると「すべてがいい会社」ってなんだか胡散臭くありませんか?
私は記事に使うかどうかは置いておいて、必ず「ネガティブな面」も聞くようにしています。
(例)
もっと(会社に・メンバーに)こうなってほしい点
入社後に感じたネガティブなギャップ
ちょっと違うなと感じたエピソード
入社して苦労したこと
これらはすべて、その会社の「ポテンシャル」です。改善ポイントであり、本当に求めている候補者像を炙り出してくれるものでもあります。
記事がありきたりでつまらないな、と思う方は「ネガ」にも目を向けてみてください。それを裏返すと、とても大きな「ポジ」になりますよ。
本当に大事なことはインタビュー後に語られる
これは“あるある”ですが、「ではこれでインタビューを終了といたします」と言った後の雑談中、まあまあな確率でとんでもないキラーワードが出てきます。なので、すぐにレコーダーは切らずに、ギリギリまで録音を回しておきましょう。
ただし、インタビュー後の発言を使う場合は事前にちゃんと了承を得ること。ここ、ポイントです。
ライティング編
まずは基本の型から
多くの場合、採用広報インタビュー(社員インタビュー)は、
これまでの経歴
今の会社でのこと
将来の展望
この3部構成で執筆されることが多いです。基本的にはこの形に添って執筆をすると間違いないと思います。
その人の“人となり”が一番伝わるエピソードはどれか
エピソードが多すぎて絞りきれない場合は、まずはインタビュー当日のインタビュイーのことを思い浮かべてみましょう。どんな口調で、どんな声色で、どんな表情で、どんな人でしたか?
もちろん多くの人に読んでもらうという意味で「バズ」や「キャッチーさ」も大事です。しかし、何より大切なことはインタビュイーの「人となり」を丁寧に伝えること。
それが仮に“地味”に思えるエピソードだったとしても、その人らしいものであれば、積極的に残していきましょう。
タイトルと小見出しの付け方
あくまで私のやり方ですが、ある程度原稿ができあがったら、キラーワードや引きのあるフレーズにマーカーを引いていきます。ちょっとでも「ここいいな」と思ったら、マーキング。はじめから終わりまで見終わったら、次は小見出しを入れる場所を指定していきます。そして、そのセクションのマーカー部分を眺めながら、小見出しを考えていきます。
ちなみに、小見出しのパターンは大きく分けて2つです。
インタビュイーの発言でキャッチーな言葉を抜き出す「発言抜き出し」形式
そのセクションで語られているポイントをまとめる「一言概要」形式
タイトルは1と2の混合で作ることが、最近のトレンドとしては多いように感じます。
リード文≠プロフィール文
リード文にプロフィールを入れるな、ということではありません。が、それだけだと当然ながら読んでもらえません。
リード文にこそインタビュイー独自のエピソードを取り入れる。そうすることで、仮に全文読んでもらえなくても、その人がどんな人かを最低限伝えることができますよ。
編集者の目線
前職や他社のエピソードの表現
前職や他社と比較して、現在の会社を語るパートはかなり注意して編集をします。少しでも前職批判や、他社を落として現職を上げるような印象、読み方ができる文章は、細かく調整を入れるようにしています。
ご本人に意図がなくても、文字にするとそう読めてしまうケースは少なくありません。他社批判は、自社にとってもリスクなので、表現には細心の注意を払うようにしましょう。
“履歴書”記事になっていないか
事実ベースの記事だと、極論「WantedlyやYOUTURUSTを読めばいい」となってしまいます。わざわざ「インタビュー」の体裁を取るわけなので、事実からさらに深い「事実に対する思い」までをしっかり聞いて、書けるスキルが要されます。
話し言葉を残しすぎていないか
どんなにラフなメディア運用であっても、話し言葉の記事は読書体験が落ちます。すべてをガチガチに書き言葉にする必要はありませんが、最低限のラインは死守するようにしましょう。
よろしければ、上記の記事も参考に。
タイトル・小見出しに打ち出したいキーワードが入っているか
とても簡単に言ってしまうと、エンジニア採用をしたいのにタイトルに「エンジニア」のワードが入っていないとダメだよね、ということ。
ライターはインタビュイーの思いを最大限届けるのが仕事ですが、編集者は、その思いが一人でも多くの人に届くかどうかを考えています。
記事を読んでほしい人に引っかかるワード、刺さる言葉が小見出しにしっかり反映されているか。思わず「読んでみようかな」と心を動かすタイトルかどうか。
執筆後にもう一度見直してみると、より深い記事になると思いますよ。
おわりに
採用インタビューは人との出会いです。
SNSのフォロワー数は少ないけど、社内ですごく信頼されている人。普段は口数が少ないけれど、誰よりもメンバーのことを思っているマネージャー。強面で、経歴もツヨツヨだけど、挫折もたくさんしてきた経営者。
目立つ存在ではないかもしれないけれど、ひたむきに頑張っている人たちに光を当てる、素晴らしい仕事だと思っています。
インタビュー記事の作り方は人それぞれ。ライターが10人いれば、10通りあります。あくまでこの記事は“参考”に、ご自身のインタビュー記事の作り方を見つけてみてください。そのためには数をこなすこと。
そして、今日もどこかで頑張っている、素敵なビジネスパーソンにスポットライトを当ててください。一緒に、いい記事を作っていきましょう。
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