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【詩】小石集め

新しいものが 古いものを
巻きこんで おおきくなって
固まって ごちゃごちゃになって
急に土石流のような 
やけに胸騒ぎのする音をたてながら
いびつな円形の塊が
押し流されていく

涙が出るような大袈裟なことじゃない
飲み込んでさえしまえば大丈夫だから
平気、と手のひらを前に出して
コップを持ちあげて 一気に流し込んで
自分の中で消化されるのを
ただ 待っている

そのあいだ
全部が溶けて消えてしまうまでのあいだ
目をつぶって
土石流の音を聴いている
そのなかにまだ 綺麗な石ころがあったのを
思い出したとき
ふと伏せた身が起き上がってしまう
だって
それにわたしが手を伸ばすのを
誰に止める権利も ないのだから

それはまだ わたしのなかのもの
あなたとは関係のないもの だから
明日の朝になって 小便として出てくるまで
物好きが使う 皿の上に
綺麗な小石を集めて 眺めていても
べつにいいでしょう

たったひと晩くらい
罪のない 哀れな夢をみて
音の出ない涙で 
小石を流してあげたいだけなの
自分の手で 
流れにのせてあげたいだけなの

自分でも キモいと思うよ
でも、みんなそうでしょ?

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