劇場版「名探偵コナン」雑感 04
瞳の中の暗殺者(2000年公開作品)
◎総論
はいはい、僕も早速、観てまいりました。
いつものように平日の昼間出かけたんですが、今年は若いアベックの割合が非常に増えたような気がします。それだけ「コナン」が普通の人にも浸透してきたってことでしょうか。どうやら、ヲタクは僕一人だけだったみたい……(笑)。
さて、まずは結論から述べましょう。
今回も傑作です。
「時計じかけの摩天楼」や「世紀末の魔術師」のようなあっと驚く結末は用意されていませんが、大きな瑕疵も見あたらず、上手にまとまった――実に完成度の高い作品だと思います。
前3作は――「時計じかけの摩天楼」に代表されるように、複数のエピソードが積み重なって一本の映画になっていましたよね。そのため、エピソードの切れ目で、ひと呼吸つく余裕があったんですが、今回はそうはいきません。冒頭で登場するジェットコースターに象徴されるように、一度乗ったら、ラストまで猛スピード――とにかく息つく暇などありません。ひとつの事件だけが110分間かけてたっぷり描かれ――そういう意味では、初めて映画らしい作品になったんじゃないでしょーか?
映画らしい――といえば、アクションシーンも半端じゃありませんよ。後半、トロピカルランドに舞台を移してからの活劇は、映画ならではのど迫力。「おいおい、コナン君。いくらなんでも、そりゃ無茶だろう」ってシーンも多々ありますが、ま、それはご愛敬。
そう――今回の舞台はトロピカルランド。
新一がコナンとなるきっかけを作った運命の遊園地であります。あの「ジェットコースター殺人事件」が起こる直前の新一&蘭の姿も描かれ、昔からのファンにはたまらないシーンもいっぱい。
推理モノとして観た場合は――確かに物足りない部分もいくつかあったんですが、首をかしげるような矛盾もなく、まあそれなりに満足といった感じでしょーか。これまでの映画評にも書いていることですが、コナン映画の魅力は事件そのものではなくて、事件によって変化の生じる人間模様にありますからね。瑕疵がなければいいんです。
今回最大の見どころは、蘭とコナン(新一)が思いがけず見せるおたがいへの想いと本音。その見せ方が実にうまいっ! なるほど。それぞれが胸に秘めた本当の気持ちを描くのに、記憶喪失を利用するのはグッドなアイデアでした。二人の絆に付随して、親子の絆、夫婦の絆も浮き彫りにされ、これまででもっとも奥深くキャラの内面に踏み込んだ作品となっております。
ラストシーン――コナンが刑事部長に呟くひとこと。これがまたいいっ! 「時計じかけの摩天楼」のラストに匹敵するくらいの考え抜かれた名台詞であります。
◎思いついたことをつらつらと……
◎冒頭――降下直前のジェットコースター
これは映画ならではの迫力ですな。思わずおしっこちびりそうになっちゃいました。あの調子で降下シーンまで描かれていたら、たぶんホントにちびっていたでしょう(笑)。
◎トロピカルランドの二人
前3作のプロローグ(オープニングまでのワンエピソード)は、たとえカットされてもストーリーにそれほど影響を与えませんでしたが、本作のこれはカットするわけにはいかんでしょう。クライマックスシーンの重要な伏線となっております。
◎クイズ
毎回恒例となったクイズ。こりゃ、難解だけど、うまいっ!(前回のクイズがイマイチだったからね) しかしなぜ、クイズ中に登場する人物が哀ちゃんとコナンなんだろう? もしかして、哀ちゃんがホントにこうやって答えたとか。……哀ちゃんならホントにいいそうだけどね。
◎初登場! 白鳥警部の妹
綺麗ぢゃん。旦那さんはたいしたことないけど。
◎記憶を失った蘭を見て、涙を流す園子
園子の意外な一面。なんやかんや悪口いいながら、やっぱり二人は親友なんだなあ。
◎記憶を失った蘭を見て、本音(?)を漏らす哀ちゃん
本筋には関係ないけど、見せ場のひとつですな。
◎トロピカルランド
なんちゅーでかい遊園地だ。てっきりディズニーランドをモデルにしたんだとばかり思っていたけど、パンフレットを見ると、どうやらスペイン村らしいね。……地元ぢゃん。一度、行ってみようかな。
◎風船をもらう小学生
あ、この子たちだけ、妙に子供らしい声。なるほど、彼らが「アフレコ体験」した小学生なわけね。
◎パンフレット
……キャラ紹介のページに高木刑事が載っていない……。熱狂的な高木ファンは多いっていうのに……。
注意! この先、重大なネタバレをしております。
◎証拠はないよなあ……
今回の事件、コナンが犯人を指摘したその根拠は動機の有無――ただそれだけ。まあ、目の前で犯人に襲われてるわけだから、犯人のほうもいい逃れなんてできないわけで、それはそれでいっこうにかまわないんだけど、でも推理モノとして映画を観ていた観客にとってはちょっとねえ……。これじゃあ推理のしようがないぢゃん。ま、全然怪しく描かれていなかたことから、彼が犯人であることはバレバレだったわけだけど。
警察が小田切敏也の無実を簡単に信じてしまったのも疑問。これに関しては映画批評家の服部さんがこちらで詳しく述べておられます。(※リンク切れてます)
よく考えてみりゃ、小五郎に相談をしたかっただけの小田切が、わざわざぬいぐるみを着込んで近づいてきたその理由もよくわかんないよな。
最後の最後に明かされる「硝煙反応を消すトリック」は――ラスト近くまで引っ張ったわりには、大したことないものだったよなあ。それにここからわかることは、「会場にいた誰でも犯行が可能だった」ってことだけで、真犯人を指し示す証拠にはなってないよね。もうひとつ――真犯人を指し示す手がかりがあったら文句なかったのになあ。
◎ラストのひとこと
――と、いろいろ不満を書いてみたけど、今回の推理シーン――大きな矛盾点や疑問点はまったくなく、驚きはすくないけれども、ちゃんと考えられていると思います。何度も書いてるけど、推理部分ばかりがコナンの魅力じゃないしね。
さてさて、今回一番の見どころは……噴水での戦いや、コナンの告白シーンも確かにすばらしいんですが、やっぱりラストのひとことに尽きるでしょう。
NEED NOT TO KNOW……
あの言葉がここに使われるとは……してやられたって感じです。
「コナン」って、こーゆーヒネリがホントうまいんですよね。たぶん、この部分って、青山氏のアイデアなんじゃないかなあ。
(2000 4 /??)
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