見出し画像

宇宙戦艦ヤマト 復活編 32

第9章 さらばマグネ星人(4)

3(承前)

「私の見間違いじゃないわよね?」
 赤ん坊を抱きかかえたまま、ユキがいう。
「……ああ」
 古代は頷いた。
「ネオアルゴンの光を浴びて時間を逆戻りしていたゴーステストの顔は……途中で確かに島に変わった……俺たちのかつての仲間だった島大介に……」
「どういうこと? ゴーステストは島さんだったの? そんなまさか――」
 ユキの言葉をかき消すように、けたたましい警報が鳴り響く。
 ゴーステストの身になんらかの異常が起こると警報装置が作動する仕組みになっていたのかもしれない。
 部屋の扉が開き、マグネ星の兵士たちが大量になだれ込んできた。
「ゴーステスト様、ご無事ですか?」
「どこにおられるんです? ゴーステスト様」
「カックーミサイルが消滅しました。なにがあったのでしょう?」
 古代たちには目もくれず、兵士たちは慌てた様子であたりを見回している。
 まさか目の前の赤ん坊がゴーステストだとは夢にも思っていないのだろう。
「ユキ、逃げよう」
 そう耳打ちして、彼女のうでを引っ張る。
「歩けるか?」
「大丈夫。たいした怪我じゃないわ」
 古代たちを襲ってくる者はいない。
 兵士たちはカックーミサイルと最高指導者の消滅にパニックを起こしているらしい。
「ゴースター様もゴーステスト様もいなくなってしまった!」
「我々は誰を頼ればいいんだ?」
「ああ……もうおしまいだ!」
 絶望するマグネ星人たちを横目に、古代とユキは通路を進んだ。
 ユキのうでの中ではゴーステストがすやすやと気持ちよさそうに眠っている。
 ユキは赤ん坊の頭をやさしく撫でた。
 
 三人が無事ヤマトに帰還した直後、マグネ星人の宇宙船は大爆発を起こした。
 最高指導者を失って絶望した彼らはおそらく、自滅の道を選んだのだろう。
 古代は複雑な気持ちで大宇宙船の残骸を眺め続けた。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?