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劇場版「名探偵コナン」雑感 02

14番目の標的(ターゲット)(1998年公開作品)

◎映画が始まるまで……

 ついにやって来ました。コナンです。映画です。
 一週間ぐらい前からわくわくしていました。駅に貼られたポスターやTVのCM、雑誌での紹介記事を見かけるたびに、にやにやしておりました。「最近、機嫌いいね」と声をかけられても、まさか「うん。もうすぐコナンが公開されるから」とはいえない自分……。ああ、すっかりオタクになっている……(笑)。
 どーしてここまでコナンの魅力にとらわれてしまったのか──TV放映が始まる以前からコナンは読んでいたし、TV放映も最初から欠かさず観ていたわけで……好きではあったのですが、本当に心底惚れ込んでしまったのは──やはり昨年公開された劇場版第1作「時計じかけの摩天楼」からだったんでしょう
 いやいや、いまでもあのときの興奮を思い出すと鳥肌立ちます。どれくらい興奮していたかは、こちらを観ていただければよくわかると思いますが……。
 劇場版の出来があまりにも素晴らしかったので、第2作が制作されると聞いたとき、僕は大喜びし──かつ不安にもなりました。
 果たして──1作目を上回る出来になるだろうか?
 正直……それは無理だろうと思いました。だって1作目の完成度の高さは、半端じゃないですからね。昨年秋、ビデオで見直したときも、また今年のお正月にTV放映されたときも、まったく感動はあせてませんでしたから。
 TVでも──とくにオリジナルの場合は、作品の完成度が極端に違ったりしますし……うーーん、続けて傑作が生まれるかなぁ。難しいんじゃないかなぁ……と、漠然と考えていたわけです。

 そして──どきどきしながらも、ついに4月18日……公開初日を迎えたのでありました。

 ホントは公開初日に観に行きたかったんだけど、残念ながら土、日はお仕事。パソコン通信やインターネットで、「観てきたよ!」という書き込みを目にするたびに、「うう、いいなぁ」と指をくわえていました。ただ──映画はできるだけ先入観ナシに観たかったので、「ネタばれ警告文」のある文章は──ものすごく読みたい衝動に駆られながらも──涙を飲んで飛ばしました。
 皆さんの感想を観ると──好意的な文章ばかりで、「をを! 今回も期待が持てるんじゃないかぁ?」って気になってきました。「事前にパンフレットを見ないほうがいい」というアドバイスを深く胸に刻み、「○○を蘭にむけて○○ところとか、もうすっごいよかったです!」という発言には、いろいろ妄想をたくましくもしたりして……(小便を蘭にむけて放出するところ?(笑))。 

 そして──やって来ました月曜日!
 僕は朝イチで映画館へ向かったのでありました。
 平日の朝なので、ほとんど観客ナシ──僕の他に数人いた程度。一組カップルがいたけど、あとは一人でやって来た二十代ぐらいの男たちばかり(たぶん僕が最年長(笑)。……怪しい集まりだな。
 中央に座っていた人がパンフレットを広げていたので、僕は「パンフレットを見てはいけない」という戒めを思い出し、彼の前へ座ったのでありました。
 待つこと数分……。
 やがて館内は暗くなり……上映開始。

◎で、ここから映画の感想

とりあえずネタばれなし・ヴァージョン

 はい……ここまで読んですでにお気づきのとおり、私、去年ほどは興奮してません(笑)。いや、去年が異常だったんだけどね。
 誤解なきよう、最初にいっておきますが、今回の映画だってすごく面白いですよ。傑作といっていいと思います。ただ……昨年の映画がラストで思いがけない衝撃をもたらしてくれたのとは異なり、今回は……結末が予想できちゃったんですよねぇ。その点が、昨年ほど大はしゃぎできない理由であります。

 他の人はどうかわからないんですが、「ミステリ好き」な僕としては、コナンを観た場合、やはり「提示された謎」と「その解明」部分にどーしても焦点を合わせてしまうわけで、そこがうまく決まらないと、他の部分(キャラの魅力とかストーリーの運び具合とか)の出来がよくても、「うーーーん」といまいち不満に思ってしまうんです。「時計じかけの摩天楼」のラストは、いきなり背負い投げをくらって「うわぁ、やられた!」って感じだったのですが、今回のお話は軽く足を払われて、「あらら……これだけ?」程度の衝撃だったといえばいいでしょーか?(自分でも、たとえがよくわかんない(笑))

 ……ってわけで、昨年同様、僕の雑感文はあくまで「ミステリ」の観点からのお話となってしまいますがご容赦を。

 ここから先、「時計じかけの摩天楼」のネタばれをしています。前作の映画を観た人のみ目を通してください。

 僕、「時計じかけ……」を馬鹿褒めしてますが、とはいっても、前作で起こる事件って、謎そのものも大して魅力的じゃないし、真相だって平凡だったんですよね(犯人なんて、最初から容易に予想がついたし)。謎の魅力に関していえば、今回のお話のほうが圧倒的に上だと思うし、後半、海中レストランに舞台を移してからなんて、本格ファンなら心躍らさない人はいない──って思えるぐらいのわくわくするシチュエーションでした。
 「時計じかけ……」で起こる事件は、謎も解明もパッとしなくてイマイチ──って、そんなことを書いたら、先に記した「背負い投げ」云々の話と矛盾しているように思われるかもしれませんが──前作を観た方ならおわかりのとおり、「時計じかけ……」でもっとも驚くのは、メインの事件に関してではなく、「なぜ蘭が青い導火線を切ったか?」──その理由なんですよね。観客の目の前に大胆にぶら下がっていたはずの伏線が、制作者の仕掛けたトリックで巧妙に隠されていたもんだから、「ああ! そうだったのか!」と、最後の最後まで真相に気づかなかったわけで……。
 「14番目の標的」も、コナンたちが巻き込まれる事件そのものに関しては、前回同様、ま、それほど大したことはありません(っていうか、今回のほうが面白い)。ただ今回も「蘭が青い導線を切った理由は?」──と同じような「事件以外の大きな謎」がやはり絡んできまして……これがうまぁく決まれば、前作と同じか、またはそれ以上の感動を得ることができたんだけど……事実、コナンと蘭がその真相に気づくシーンとか、ものすごく自然でよかったんだけど……でも……最初に書いたとおり、今回は真相がわかっちゃったんですよねぇ。だから……うーーーん(涙)。
 前作も、もし途中でその真相に気づいてしまっていたなら、あれほどの感動はなかったと思うんですよ。気づかなかったトロい僕に感謝したくらいですから……。でも今回は──ああ。もうちょっとうまい描き方はできなかったもんでしょうか? 工夫すれば、どのようにでも真相を隠すことはできたと思うんですが……。今回のお話、コナンのファンであればあるほど、真相を見抜くのは簡単でしょうね。……っていうか、その真相が当たり前なんだと思っちゃって、それが「謎」であることにすら気づかなかったんだから……。

 ……とまあ、愚痴はこれぐらいにしておいて……もちろん、今回のお話にも見所がいっぱいありますよぉ。一応、ネタばれしない範囲で、押さえるべきツボをご教授しておきましょう。

★冒頭、服部君が出演?(画面の左隅にわずか数秒間の出演(笑)。服部ファンはお見のがしなく)
★少年探偵団大活躍!(今回、探偵バッジが大活躍してますな。バイクを追いかけたときも、運動場から皆を避難させるときも、探偵団の面々、ずいぶんと都合よく現場にいるなぁ……って気はしましたが(笑)。そーいや、この日、コナンは学校を休んだわけ?)
★ぶわはははは。目暮警部のフルネーム発覚!(しかも今回、ミステリアスな謎を残して退場していきます(笑))
★白鳥刑事再び……。(映画だけのキャラなんでしょーか? 今回、小五郎&目暮と共に行動するのは白鳥刑事。高木刑事は何処へ?)
★阿笠博士、うつ伏せで寝る姿が可愛い……。(ケツに矢が刺さって、一人玄関先でのたうち回っていた姿を想像すると……ぷぷぷぷ)
★サブキャラで好感度ナンバーワンはカメラマンの宍戸さん。(ちなみに「あんた、なんのために登場したの?」ナンバーワン(笑)は十和子さん) 

◎事件に関して……

 いくら犯行をカモフラージュしたいからって、4人を殺害するために13人もの人間を襲うなんて、なんだかものすごく矛盾した行動のように思えるんだけど……。しかも最初に狙ったのが警視庁の警部。次が凄腕の弁護士。おいおい、いくらなんでも危険すぎないか? 実際、阿笠博士を襲ったときは、もうちょっとのところでコナンに捕まりそうだったじゃない。もしあそこで捕まってたら、馬鹿みたいだよねぇ。
 スペードのAはまだいいとして、犯人がコルクを持っているはずだ──っていうのはちょっと強引な推理。そんなこと、断言はできないでしょう? 大体、あれだけ水中にいたんだから、流れちゃった可能性も大きいし……。もうひとつ、なにか大きな証拠がほしかったよなぁ。

◎小五郎が英理を撃った理由

 これっておそらく、このページを読んでいるような──ディープなコナンファンなら、誰もが予想ついたんじゃない? っていうか、蘭やコナンがどうして最初からこのことに気づかなかったのか不思議なくらい。
 小五郎が「英理を犠牲にしてもかまわない」と考え、犯人に銃を向けたとは到底考えられない──それがわかっていたら、自ずと真相は導き出されたわけで……。このあたり、描き方を変えれば、もうちょっとうまく観客を騙せたと思うんだけどなぁ。たとえば10年前の小五郎は、英理をものすごく憎んでいた──とか、二人の不和がもっと大きく描かれていれば、蘭みたいに「お父さんがそんな人だったなんて……」と悩むことができたに違いないんだけど……。
 でもね、物語のラスト──蘭とコナンが、10年前の小五郎&英理と同じ立場に立たされて、その真相に気づく──っていう展開は、ものすごくうまいですよね。「このままだと愛する人は殺されてしまう。だったら被害を最小限に食い止めるため、自らの手で愛する人を傷つけよう」──この発想は斬新──でもすごく自然。うん、うん。アイデアはもうめちゃくちゃに素晴らしいんですよ。ああ……だからなおさら、惜しいんだよなぁ。

◎疑問いろいろ

 最後に──今回の映画を観て感じた些細な疑問の数々をば。
●奈々さんが殺されたとき、ジョーカーのカードが落ちていた理由は?
 これ、いくら考えてもわかんない。
●「14番目の標的」って結局誰のこと?
 ……蘭──ですよね?
 皆さんの意見もお聞かせください。

(1998 4/20)


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