見出し画像

劇場版「名探偵コナン」雑感 05

天国へのカウントダウン(2001年公開作品)

◎興奮の雑感文

 これまでと同じように、封切りから2日が経った月曜日の朝、こそこそと映画館へ出かけてまいりました。
 月曜の朝だから、ほとんど観客なんていないだろうと思っていたのに……ををを、結構いるぞ。コナンの人気は、今もなお上昇中ってことでしょうか。客層は……やっぱり若いカップルが多いですなあ。あと、親子連れもちらほら。……あれ? 学校は?

 さて、黒の組織初登場となる今回の第5弾映画――面白かったのか、どうだったのか、まずは結論から申し上げましょう。

「時計じかけの摩天楼」を凌ぐ大傑作がついに登場!

 はい、そう断言しちゃいます!
 僕が「時計じかけの摩天楼」をべた褒めしてることは、皆さんすでにご存知のことだと思います。「これまで見た映画の中で、一番面白かった作品は?」と訊かれたら、迷わず「時計じかけ!」と叫んでしまうほど。「名探偵コナン」に思いっきりのめり込んでいったのは、あの映画の衝撃が多分に作用しています。
 「14番目の標的(ターゲット)」「世紀末の魔術師」も、非常に面白かったんですが、残念ながら「時計じかけ……」には遠く及ばず。去年公開された「瞳の中の暗殺者」も、無駄のない構成が心地よい秀作で、全体の完成度としては、ひょっとしたらこっちのほうが上だったのかもしれませんが、ラストで受けた衝撃は「時計じかけ……」に勝らず、うむむ、あの大傑作を越える作品は、二度と現れないのかもしれないなあ――そんな風にさえ思っていたのですが……。

きたきたきたああああっ! ビンゴぉぉぉぉっ!

 まだ興奮が冷めておりません。
 いや、正直、殺人事件そのものは、全然大したことないんです(おいおい(笑))。これまでの作品と較べてみるとわかりますが、フーダニット(誰が犯人か?)やハウダニット(どのように殺したか?)には、なんのヒネリもない。犯人は簡単に見当がつくし、トリックと呼べるものもほとんどナシ。
 ……でもね、妙にひねくれたトリックを使わなかった分、無理な設定や矛盾点も見当たらず、また、フーダニット、ホワイダニットにこだわらなかったことで、ホワイダニット(犯人の動機)の衝撃がいっそう強まって……
 動機――これはマジ、盲点でした。伏線もバッチリだったのに、こんな簡単なことに気づかなかったとは……。「コナン」の場合、動機はおざなりに描かれることが多いんですが(犯人であることを指摘されてから、犯人自身がべらべらすしゃべり出すパターンが多いよね)、今回の物語は、動機そのものが作品全体に繋がる重要なファクターとなっていて、うわあ、やられまったぜえ――と地団駄踏むこと然り。

アクションも半端じゃなく、すごいぞっ!

 中盤、少年探偵団が容疑者宅を聞き込みに回るあたり、ちょっと退屈な描写が続くので、「うーーん、今回の映画はハズレかなあ」と、ちらりと思ったりもしたのですが、後半、舞台がツインタワービルに移ってからは、ををををを、面白えっ! 手に汗握る面白さってのは、このことだったんだな。
 ハリウッド映画をはるかに凌ぐアクションの数々。これは絶対にいい過ぎじゃありませんぜ。実際、これがハリウッドで実写化されていたら、「ダイ・ハード」や「タワーリング・インフェルノ」なんて目じゃない、ものすごいパワフルかつスリリングな映像になっていたはず。
 見せ場も随所に用意されていて、いたるところで涙ボロボロ。蘭&新一のエピソードは今回とっても控えめだけど、その分、少年探偵団が前面に出てきて、しかしそれでも充分、大人が楽しめる仕上がりとなっております。すごいすごい。さすがさすが。

まだまだ、書きたいことはいっぱいありそうなんだけど、まだ自分の中で整理がついていなくって……。そんなわけで、

 思いついたことをつらつらと……

◎キャンプの好きな(笑)少年探偵団
 コナンの台詞にもあるけど、ホントにキャンプの好きな奴らだなあ。夜中、トイレから戻る元太君(ちょっと、漏らしたらしい(笑))。あくびと共に動かした指が、なんだか妙に細長くって、ををを、色っぽく見えちまったい。元太に欲情するなんて、バカバカッ(汗)。

◎恒例のクイズ
 うむ……? この答え、イマイチ、ピンとこないんですが……。でも、ここでの元太の発言が、あとあとの重要な伏線になりますしね……。

◎30秒当てクイズ
 あ、こーゆー遊びって、小さいときによくやりましたよね。確か、ハトポッポの歌を2回口ずさむと、ちょうと30秒になるんじゃなかったかなあ。でも、こーゆーゲームをやった場合、実際よりも早くカウントしちゃうのが普通。光彦君も元太君も、なぜかムチャクチャ遅い……。

◎ツインタワービル
 おおっ! すげえっ! ツインタワーっていうと、名古屋に去年できた駅ビルを思い出しちゃうんだけど、どうやらモデルは別にあるみたいですね。名古屋のツインタワーには連絡橋なんてないしな……。

◎10年後の顔を予想するコンピュータ
 本編とは深く関わらないけれど、見どころのひとつ。歩美ちゃん、可愛い~♪ 園子はもっと、イケイケになってると思ったんだが、意外にも美人OL風。蘭の10年後の顔は結局、披露されず。……むむむ、気になる……。
 このコンピュータにインプットされたコナンと哀ちゃんのデータが、組織の目に触れて、事件が起きるのかと思っていたんだけど……そうじゃなかったね。

◎第1の殺人――ダイイング・メッセージ「お猪口」の謎
 遺体のそばには割れたお猪口。僕が真っ先に思いついた容疑者は、「猪年生まれで、猪突猛進型」の秘書のお姉ちゃん。でも警察は、チョコレート好きのコンピュータ・プログラマーが怪しいとか、絵の具を混ぜる入れ物が猪口の形に似ているから画家の先生が怪しいなどとは推理するけれど、秘書のお姉ちゃんのことにはまったく触れようとしない。あれれ? どうして? 僕の中では、ここで秘書の姉ちゃん、容疑者の第一候補に急上昇。第二候補はアリバイのないプログラマー。……それはともかく、ペンダントの形がお猪口に似てるからオーナーが怪しいっていう推理は、ちょっと無理があるような……。

◎第2の殺人――犯人からのメッセージ「お猪口」の謎
 ありゃ、容疑者第二候補のプログラマーさんが死んじゃった。ここにも、割れたお猪口。ダイイング・メッセージじゃなくて、犯人がわざと残していったものらしい。むむむ。深まる謎。え? 血のついた欠片がない? ひょっとして、哀ちゃんが隠したんじゃ……。

◎再び、30秒当てクイズ
 ツインタワービルのオープニングパーティーで行なわれたゲーム。商品は豪華なのに、なんちゅーチープなゲームだ(笑)。全員の腕から時計を外すってのが、このあとの重要な伏線になってるあたりもうまい。前作に続き、ここで一般募集のちびっ子声優さんたち登場。

◎ビル爆破
 ここから先は、クライマックスの連続なので、詳しくは語りませんです。あ、でも、ひとつだけ。――赤ん坊を抱えたお母さん、70階から、なぜ66階へ? 赤ちゃんをなだめる場所がそこにしかなかったのか? めちゃくちゃ怪しいぞ、この女。……実は犯人?

以下、重大なネタバレを含みます。

◎「本格ミステリ」として観た場合……

 「ネタばれナシ」の感想文にも書きましたが、今回の連続殺人事件――犯人はトリックらしいトリックなんて、まったく使っておりません。唯一の謎らしい謎は「第2の殺人事件のときのアリバイ」なんですが、これも「実は第2の殺人は組織の仕業だったんだよーん」って解決だしね。真犯人を追いつめる最後の手がかりも、伏線がわかりにくい分、手がかりとしては唐突な感を否めないし。
 ただ、妙なトリックにこだわっていない分、ちゃんと現実味もあるし、矛盾点もない――そのあたりがすっきりしていることで、犯行の動機がひときわ際だって見えます。動機(富士山がビルによってさえぎられてしまったこと)と見立て(お猪口を富士山に見立て、それをふたつに割ったこと)がぴたりと一致する――このときの快感といったら。しかも、犯人の家から富士山が見えないことに関しては、かなり親切に伏線が張ってあったんだよね。今回は、このホワイダニットだけで充分に万歳三唱。贅沢なことをいえば、ホントは真珠のネックレス云々のあたりで、もうちょっと犯人を指し示す手がかりが欲しかったところだけど。

◎今回、最大の衝撃は……

 とにかく、見どころの多い作品だったんですが、最大の衝撃は「歩美ちゃんが30秒を正確に数えられた理由」でしょう。「時計じかけの摩天楼」のラストに匹敵するサプライズ。しかも、これがものすごい説得力を持ってるんですよねえ。なるほど、時計のない状況で、時間をカウントしようと思ったら、脈拍に頼るってのは、本来、誰もが考えつきそうなこと(ブラック・ジャックもやっているし(笑))。それを観客に少しも気づかせない、その描写方法には感心。
 説得力――ってことでいえば、車で脱出する場面で、物理の数式を持ち出してくるあたりも、スタッフ陣――なかなかのテクニシャンですな。あーゆー風に解説されちゃあ、なるほど、車で空も飛べるかな――って思えちゃう(このあたり、去年の「瞳の中の暗殺者」の、無茶なアクションシーンに対する反省なのかな?)。
 あと、元太君の「米粒ひとつも残さずに――」と叫びながら哀ちゃんを助けるシーン。「あたしには席がない」って寂しそうに呟いた哀ちゃんの姿が、綺麗にリンクして、なんともいえぬ重厚な味わいを醸し出したり――。今回、こーゆー演出がむちゃくちゃうまいんだよなあ。

◎ちょっとだけ疑問点

 そんなわけで、大傑作だった今回の映画ですが、最後に無理矢理なアラ探し。ツッコミどころをひとつ。
 ラストの30秒間カウントダウン。歩美ちゃんの勘に頼るなんていう大きな賭に出ず、外部の人にカウントしてもらえばよかったんじゃ? 通信はできたんだからさあ。

(2001 4/23)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?