宇宙戦艦ヤマト 復活編 03
第1章 時の流れ(3)
2(承前)
時に西暦2223年。
二十年前の戦いが嘘だったかのように、恒常的に続く平和な毎日。
地球防衛軍は解散となり、それ以来、かつての戦友たちが顔を合わせることはなかった。
古代は航空学校で教官を、ユキは救命救急センターでフライトナースとして働き、充実した日々を送っている。
ヤマトの引きあげを機に再会しないか、と提案したのは宇宙科学省に勤める真田だった。
朽ち果てたヤマトの眠る宇宙科学センターに、ひとり、またひとりと、かつての仲間たちが集まってくる。
やがて、ヤマトを間近で見上げながらのパーティーが始まった。
皆、アルコールに酔いながら昔話に花を咲かせている。
三杯目のビールにご機嫌となった相原が、大声で歌を歌い始めたそのとき、けたたましい警報音が地下室全体に響き渡った。
3
「なんだ、この警報音は? なにが起こった?」
宇宙科学センターの所長があたりにつばを飛ばしながら叫ぶ。
「どうやら、地下1階に設置された原子力高圧機にトラブルがあったようです」
手元のメーターを確認しながら、所員が青ざめた表情を浮かべた。
「まずいですね。機械の内部から大量のエネルギー体が漏れています」
「原子力高圧機内のエネルギー体って、まさか――」
「G8003……原子の動きを逆転させる力を持つネオアルゴンです」
所長は顔色を変えた。
「ネオアルゴンの発する光を浴びると、その物質は時間の流れにさからって、昔の状態に戻っていくのではなかったか?」
「はい。壊れた機械は新品の状態に、腐ったりんごはもぎたての新鮮なものに、老衰直前のネズミは赤ん坊に戻ったという実験記録が残っています」
「すぐにシャッターを下ろせ。ネオアルゴンが外に漏れたら大変なことになるぞ。もし人体が浴びたら、一体どんな影響があるか――」
所長の言葉が不意に止まる。
「今日、地下には大勢の人間が集まっているのではなかったか?」
「はい。ヤマトの元乗組員たちが……」
自動防御装置が働き、まもなくネオアルゴンの流出は止まった。
防護服に身を包んだ救急隊がすぐに地下へと向かったが、彼らがかつての英雄たちのもとへたどり着いたときにはもう遅かった。
古代たちはネオアルゴンの光を浴び、二十年前の姿に戻っていたのである。
つづく
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