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ろんぐろんぐあごー

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デビュー以前に書いた素面では到底読めない作品をひっそりと公開。
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2022年12月の記事一覧

フォスター・チルドレン 38

フォスター・チルドレン 38

第4章 最後まで理解し合えなかったね(2)1(承前)

「彼らとは知り合いだったの?」
「……いいえ。うちも軽率やったんです。彼氏にふられてやけになっていたとき、あいつらが近づいてきたもんやから……うち、ふらふらっとついていってしもうて、つい一緒になって遊んでしまったんです。それっきりのつもりでした。でもあいつら、しつこくって……」
 彼女はため息をついた。
「葉月さんがいなかったら、うち、どうな

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フォスター・チルドレン 37

フォスター・チルドレン 37

第4章 最後まで理解し合えなかったね(1)1

 親父が失踪して大騒ぎとなった日から、四日が過ぎた。
 水曜日。この日は朝から、空砲のような爆音が何度も響き渡り、そのたびに僕は飛び上がって驚かなければならなかった。
 新聞に織りこまれていた広告で、今日が年に一度の花火大会であることを知る。打ち上げの準備をしているのだろう。
 この町の花火大会を最後に見たのは一体、いつのことだっただろうか?
 大学

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フォスター・チルドレン 36

フォスター・チルドレン 36

第3章 誰を救おうとしているんだろう?(11)4(承前)

「あんたは関係ない。引っこんでいてくれないか」
 男は相変わらずガムをくちゃくちゃと噛みながら、僕をひと睨みする。
「いや……確かに関係ないんですけどね。でも彼女、嫌がっているように見えるので」
「ああん?」
 男が僕にすごんでみせた。すごまれることには慣れている。バンドをやっていると、馬鹿な客にからまれることもたびたびあった。
「それに

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フォスター・チルドレン 35

フォスター・チルドレン 35

第3章 誰を救おうとしているんだろう?(10)4(承前)

 ひょっとしたら、親父は昨日の夜と同じ場所へ向かっているのではないだれおうか。
 昨日の夜、親父は家と正反対の方向へ車を走らせ、事故に遭った。一体、親父はどこに向かっていたのか――もしかしたら昨日果たせなかったことを、今日やろうとしているのかもしれない。
 アクセルを回した。周りの景色を気にしながら、海へと続くバイパスを飛ばす。やがて、親

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フォスター・チルドレン 34

フォスター・チルドレン 34

第3章 誰を救おうとしているんだろう?(9)4

 親父が失踪した。
 驚きや不安よりも、親父の身勝手さに腹が立った。すぐに病院へバイクを走らせたが、まだ親父は戻ってきていないという。
「今、『心のオアシス』の方たちが一生懸命探してくださっています。身体のほうはすっかり回復していますから、おそらく心配はないでしょう。車椅子ですから、それほど遠くには行ってないと思うのですが……」
 看護婦は不安そう

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フォスター・チルドレン 33

フォスター・チルドレン 33

第3章 誰を救おうとしているんだろう?(8)3

 家に戻った僕は押入の中から高校のときの卒業アルバムを引っぱり出した。こんなものを見るのは何年ぶりだろう。アルバムのカバーにはたくさんの埃がかぶっていて、くしゃみを連発する。
 三年二組の集合写真のページを開けてみた。一番後ろの列の右端に映っているのが僕だ。腹を立てているような、むすっとした顔つき。
 この頃の僕はどんなことを考え、なにを思って生き

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フォスター・チルドレン 32

フォスター・チルドレン 32

第3章 誰を救おうとしているんだろう?(7)2(承前)

「もっと自信を持ったら?」
 ミミは僕をぎゅっと抱きしめ、耳元で囁いてくれた。
「あなたのギター、すごかった。絶対に才能あるわよ。一人でも頑張れる。ね? 頑張ってみてよ」
「ありがとう……」
 僕は彼女を抱きしめ返した。
「頑張れるような気がする……。駄目でもともと――そう思えば気が楽だし。昨日のロック天国も、そう思っていたから成功したんだ

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フォスター・チルドレン 31

フォスター・チルドレン 31

第3章 誰を救おうとしているんだろう?(6)2

 「ミルキーロード」では客がソープ嬢を指名することはできない規則となっていたので、結局、蘭には会えなかった。
 いや、別に慰めてもらう相手が蘭である必要はなかった。
 僕の相手をしてくれた女性はミミという名のあまり垢抜けていない丸顔の少女だったが、彼女は僕の話を聞いて、蘭以上に僕の心を安らげてくれた。
 蘭の場合は元同級生ということもあり、あまりみ

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フォスター・チルドレン 30

フォスター・チルドレン 30

第3章 誰を救おうとしているんだろう?(5)1(承前)

 病院を出ると、すでに太陽はかなり高い位置にまで昇りつめていた。腕時計に目をやる。一時を数分回ったところだ。今日は夕方からバンドの練習があったが、どうしても足を向ける気にはなれない。
 アパートに戻ると、郵便が届いていた。「フォスター・プラン協会」からだ。封を開けると、リカードと彼の両親からの手紙が入っていた。僕にはスペイン語が理解できない

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フォスター・チルドレン 29

フォスター・チルドレン 29

第3章 誰を救おうとしているんだろう?(4)1(承前)

 染みひとつない病室の真っ白なドアを開けるときは、少なからず緊張した。脳裏に半年前――母さんの危篤を聞かされ、病院へやってきたときの記憶が鮮明によみがえる。
 だが半年前とは違い、ベッドの上の親父は僕のほうに顔を向けて微笑んだ。想像していたよりも、ずっと元気そうだ。たくさんの管が身体中に繋がっているのではないかと思っていたが、そのようなもの

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フォスター・チルドレン 28

フォスター・チルドレン 28

第3章 誰を救おうとしているんだろう?(3)1(承前)

 親父はこれを飲んだ……。
 僕はしばらくの間、呆然とボトルの中身に視線を落とし続けた。
 僕のせいだ。僕は昔から親父のお荷物でしかなかった。大人になってもそれは変わらない。僕は親父の疫病神でしかないのだろう。
 ボトルの蓋を閉めると、親父がいつもしていたようにそれを首からぶら下げる。身体の中に根を生やしていた重苦しい塊が、ますます僕の心を

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フォスター・チルドレン 27

フォスター・チルドレン 27

第3章 誰を救おうとしているんだろう?(2)1(承前)

「それにしても信じられません。樋野さんが事故に遭うなんて。車の運転に関してはとても慎重な方なのに……」
「父は疲れていたんだと思います。夕べも、今日中に作らなければならない書類があるといって、遅くまで事務所に残って仕事をしていたんですから」
 別に攻めるつもりはなかったのだが、そんな言葉を口にする。
「そんな急ぎの書類はなかったはずなんです

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フォスター・チルドレン 26

フォスター・チルドレン 26

第3章 誰を救おうとしているんだろう?(1)1

 ものすごい事故だったらしい。警察の人からぺしゃんこになった車の写真を見せられたときは、あまりにも生々しいその光景に全身から血の気が引いた。
 車体の前半分が路肩の電柱にめりこんでいた。昨日の午後、目にしたばかりの親父の愛車はまったく原型をとどめておらず、元の姿を知っているだけになおのこと痛々しい。よくこれで命を落とさなかったものだと、ただただ胸を

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フォスター・チルドレン 25

フォスター・チルドレン 25

第2章 無様な自分を見られたくない(12)4(承前)

「まあ、とにかく今日はプロの先生に褒められたんだ。先のことは考えずに、ぱあっと派手にやろうぜ」
 アクセルを回し、爆音を辺りに響かせながらアツシがいった。
「俺のお薦めの店はもうすぐだからよ。お座敷のあるスナックなんて、行ったことないだろう? めちゃくちゃ雰囲気いいんだぜ」
「あ、ああ……」
 ちらりと横目でゼンタを見る。ヘルメットをかぶって

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