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ろんぐろんぐあごー

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デビュー以前に書いた素面では到底読めない作品をひっそりと公開。
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2022年11月の記事一覧

フォスター・チルドレン 07

フォスター・チルドレン 07

第1章 間違いなく逃げ出したんだと思う(5)2

「お待たせしました。どうぞ」
 蝶ネクタイの男が戻ってきて、僕を呼んだ。彼のあとについて、足早に待合室を出る。
 カーテンの前に立たされ、「ではごゆっくり」といわれ、促されるままカーテンをくぐった。
 一人の女性が立っていた。僕の顔を見てにこりと微笑み、「こんにちは」と明るい声を出す。
「ランです。よろしくお願いします」
 可愛い女の子だった。綺麗

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フォスター・チルドレン 06

フォスター・チルドレン 06

第1章 間違いなく逃げ出したんだと思う(4)1(承前)

 部長に辞表を提出したのは二週間前だった。部長はこうなることを予想していたのか、「ご苦労さん」と、僕の顔を見ようともせずに封筒をふところにしまいこんだだけ。それ以上、なんのリアクションも示してはくれなかった。社員全員が僕の背中を見て笑っているような気がして、僕は「失礼します」と頭を下げると、そのまま早足でトイレへ駆けこんだ。自分の居場所はも

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フォスター・チルドレン 05

フォスター・チルドレン 05

第1章 間違いなく逃げ出したんだと思う(3)1(承前)

 アツシはテーブルの上のマッチを取り、煙草に火をつけた。マッチには店の名前が刻まれている。「ミルキーロード」――喫茶店などに置かれているマッチとは異なり、店の場所も電話番号も記されていない。ソープランドという文字もどこにも書かれてはおらず、知らない人が見たら、なんのマッチだかわからないだろう。
 ソープランド――その言葉が再び、僕の胸を締め

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フォスター・チルドレン 04

フォスター・チルドレン 04

第1章 間違いなく逃げ出したんだと思う(2)1(承前)

 やがて車はビジネス街を離れ、人通りの少ない脇道に入った。居酒屋やバーが建ち並ぶ夜の街。今はひっそりと静まり返っていて、時折、野良猫が走り去っていく姿だけが見える。
 胸の痛みは少しずつ和らいでいった。完全に痛みが消えたのは、薄汚れたジャンパーを着て、道路の脇に座りこみ、競馬新聞を広げている四十過ぎぐらいの男を見かけたときだ。
 彼は車がや

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フォスター・チルドレン 03

フォスター・チルドレン 03

第1章 間違いなく逃げ出したんだと思う(1)1

 昨日の酒がまだ少し残っていた。
 こめかみのあたりを、ドアでもノックするように軽く叩く。胃の辺りにどんよりとした重いものがたまっている気がするのは、酒のせいばかりではないだろう。
 なんだかひどく憂鬱だった。
 アツシは機嫌よく鼻歌を歌いながら、相変わらず乱暴にハンドルを動かす。カーステレオからは、僕らのバンドが敬愛しているミュージシャンの新曲が

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フォスター・チルドレン 02

フォスター・チルドレン 02

プロローグ(2) 僕が学校でいじめられていることを知った親父は「男ならやり返せ」と、いつもの調子で僕を怒鳴った。僕は泣きながら、「相手は大勢いるんだよ。かなうはずないじゃないか」と精一杯の反論をした。
「それにいつか、僕は立派な人間になってあいつらを見返してやるんだ。だから今は我慢して、その日が来るのをじっと待ってる。いつかあいつらは僕をいじめたことを後悔するよ。僕はただそのときが来るのを待ってい

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フォスター・チルドレン 01

フォスター・チルドレン 01

プロローグ(1) 僕の左手首には小さな傷跡が残っている。二センチほどの切り傷だが、そこだけ他の部分とは色が違い、皮膚も弱々しく見える。
 土砂降りの雨の中、いつも遊び場所にしていたK**城の庭園で、買ってもらったばかりのカッターナイフを握りしめ、自分の手首を切りつけたのはもう十三年も前のことだ。そう――十三年も経つというのに、いまだ傷跡は生々しく残っている。おそらく死ぬまで、この傷は僕の身体から離

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フォスター・チルドレン 解説

フォスター・チルドレン 解説

 『フォスター・チルドレン』は1997年――僕が28歳のときに書いた長編小説です。
 その前年、様々な理由が重なって会社を辞めた僕は、忙しすぎてなかなか小説が書けなかった鬱憤を振り払うかのように、フリーターをしながら空き時間に小説を書きまくっていました。
 絶対に作家になってやる! と心に誓いながら、でもなかなか思うように事が進まず、もっとも焦っていた時期でもあります。

 仕事を辞めてから新人賞

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