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エッセイ

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2021年7月の記事一覧

黒田研二から見た東野圭吾と東野圭吾から見た黒田研二

黒田研二から見た東野圭吾と東野圭吾から見た黒田研二

 名探偵天下一大五郎シリーズ唯一の番外編でもある「本格推理関連グッズ鑑定ショー」(『毒笑小説』収録)には、僕と同姓同名の司会者が登場する。

 『毒笑小説』(集英社文庫)

 当時、ファンクラブの会長を務めていた僕に、思いがけず東野さんが用意してくださった贈り物だ。何度も何度も読み返し、にやついていたあの頃が懐かしい。

 東野作品との出会いは、高校時代にさかのぼる。
 小説なんてほとんど目を通し

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〈趣味〉を語る

〈趣味〉を語る

 二十世紀のフィナーレと共に、めでたく推理作家協会に入会することのできた私だが、会員名簿用の自己紹介文を書いている途中で、むむむと頭を抱え込んでしまった。
 私を悩ませたのは〈趣味〉の項目。
 なんとも厄介なシロモノであった。

 これまでであれば、なにひとつ迷うことなく、「小説らしきものを書き散らして、いやがる友人たちに無理矢理読ませることが私の〈趣味〉です」と、胸を張って答えることができた。

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裁判員制度について考える

裁判員制度について考える

 いきなり季節はずれな話題で申し訳ないが、作家業の傍ら、冬になると子供たちにスキーを教えている。
 子供たちの上達の早さにはいつも驚かされるが、それでもやはり個人差はあるようで、何人もの子供を同時に教えていると、次第に技術力に差が生じ始める。そのため、なだらかな初級者コースから急斜面のある中級者コースへと移動するタイミングは判断が難しい。
 たとえば、こんなことがあった。
 受講生五人のうち、四人

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一番最初の依頼原稿

一番最初の依頼原稿

 2000年6月に『ウェディング・ドレス』(講談社ノベルス)でデビューしたあと、一番最初に原稿を依頼してくださったのは、学生時代に編集のお手伝いをしていた長野県松本市のタウン情報誌〈CityBoxまつもと〉でした。
 大学の授業はサボってばかりのダメ学生でしたが、〈CityBoxまつもと〉での〈本作り〉のバイトはものすごく楽しく、ここで取材の方法や文章修行など、様々なことを学ばせていただきました。

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