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「産休クッキー」問題って「産休クッキー」が問題なのか?

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まずこのテーマの記事を書こうと思った理由です。

アベマTVで取り上げていたテーマをより詳細に分解して分析しました。シンプルなテーマですが、人の気持ちがいかにすれ違いやすいかが現れていて難しい話なのですが、それなりに意味ある記事になったのではないかと思っています


前提と結論

私が大切だと思うこと。それは問題やすれ違いを個別で捉えていくことです。誰が悪いのか。誰に責任があるのか。誰が誰に配慮をすべきか。
そのあたりを個別に捉えていくことが大切なはずです。

それを要約すると以下です。

1、人が足りないのは基本的には企業が防止しないといけない点
2、休むにあたって必要な準備をするのは基本的には休む人な点
3、同僚は自分たちの大変さを理解して欲しいという点
4、不遇な人の前で、わざわざ喜ぶ必要は基本的には無い点
5、公共のために役立っている人は基本的には祝福されるべきだという点

これらは全て個別の問題であり、どれも産休を取る人全員に当てはまるものではなく、”そういう場合がある”というだけに過ぎません。

そして結論は「気付きという配慮」と「受け入れるという配慮」の相互承認のバランスが大事という結論です。
これらが実際にどういう意味かは、読み進めてもらえれば分かるように書きました。


まず、何が起きているかの確認。


妊娠した人が産休前に、挨拶としてクッキー配りました。
クッキーには「産休を頂きます」と赤く柔らかいフォントの文字で、朗らかな母子などのイラストと共に書かれていて、一番下に「ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願い致します」と書かれている。
それをもらった人が、いろいろとモヤモヤする、という話です。

では、ここにどういったすれ違いが起きているか。
クッキーを渡す側の人と、受け取る側の人の気持ちを感情を先鋭化させたものを3パターンで要約してみます。

パターン1
「育休を取ることは悪くない。迷惑をかけているという気持ちを負わせるな。仮にそうだとして、悪いのは社会か企業だから私に責任はない。配慮を強要するな。そもそも妊婦の肩身が狭くなるような雰囲気もおかしいだろう。でもその雰囲気を無視すると私が損するから、仕方なくお菓子でも配ろうか……」

パターン2
「仕事の穴をあけたくない。みんな残業続きだし。人が補充されるわけでもないし。迷惑かもしれないなぁ。ちょっと責任感じちゃうな。それで人間関係悪くなるのも嫌だし、でも育休は取らないと。なら、せめて気遣いの気持ちぐらいは表しておこうかな。お菓子だけでも配ろう。でも謝るのも変だし、ご迷惑をおかけします、ぐらいがいいかな。」

パターン3
「やばい私今幸せの絶頂だわー! みんなに見せつけたい! 羨ましがられたい! 子供を生むのは尊敬されるべき。サンキュークッキーと産休クッキーを掛ければオシャレかも。でもあからさまにするとイチャモンを付けられるから、迷惑をおかけしますっていう気遣いの体にしておこう。それなら受け取りも断りづらいから完璧だわ!」

というような形で概ね3パターンが考えられると思います。
そして、受け取る方のパターンは、この3パターンに対応したものになるでしょう。

パターン1
「こんな忙しい時に育休かぁ。迷惑かけてるって自覚あんのかな? そりゃ人が増えればいいけど、会社はそんなことしてくれないのはこの人も分かってるだろうに……。こっちは穴埋めでまた残業よ。良いご身分だね。クッキー配って気遣ってるアピールご苦労様。」

パターン2
「おぉ、もう産休の時期かー。残業何時間増えるかなー。まあでも、この人も穴は空けたくて空けてるわけじゃないだろうし。本当に悪いのは社会と企業だからなぁ。それに皆が大変なのはちゃんと分かって準備してるっぽいし、出産育児もそれはそれで楽じゃないだろうし、まあ仕方ないねー」

パターン3
「こいつ、幸せマウントしてきやがった! 人の気持ちも知らないで、自分が幸せですって無駄にアピールして性格悪いなぁ。子供育てるのがそんなに偉いんか? しかもこうやって配られると断りづらいし、断ったら私が悪者扱いされるし、なんならそれを狙ってそうでさらに性格悪いなあ」

分かりやすくオーバーに表現しましたが、ハッキリ言えばこんな感じでしょうか。これから、これらに含まれる問題とすれ違いを、ひとつひとつ考えてみたいと思います。

しかしその前に、“人は人、私は私”という個人主義的な考えについて触れたいと思います。

個人主義的にこの問題を捉えて今回のケースに応用するなら、
手続きとして産休を取り、それを業務連絡として周知したら終わり。
もらう方も、穴を埋める方も馴れ合いはしない、というのも一つのケースとして問題を解決していると ”形式上” は言えるかもしれません。
しかし、実際はそうは上手くはいかないのではないか? と思います。
そういった馴れ合いをしないケースの参考として、メジャーリーグでの死球について考えたいと思います。


個人主義的で解決できるか?
(メジャーリーグでの死球の扱いを参考に)


メジャーリーグでは一般的に死球を出しても謝らないという文化があります。
その意味は、故意でないなら謝る必要はなく、謝るということは故意であり責任があることを表すからだそうです。

興味深いですよね。
デッドボールが故意でないのなら、それは投手のミスです。
その結果として人にぶつけたのに謝らないわけですね。私の感覚としてはミスなら責任が発生すると思うので、謝るぐらいはあっていいと思うのですが、そうではない。

これはどういうロジックかというと、故意でないなら“両者織り込み済み”という前提があるのだと思います。野球と言うスポーツにデッドボールは付き物で、ある意味でのお互い様の論理がある。謝るというのはそのお互い様を越えて、自分が悪事を働いた時に初めてする。
そういうことだと思います。

ではこのロジックを今回のテーマに持ち込めば解決でしょか?

残念ながらこのロジックを今回のテーマに応用しても、問題は解決しないしすれ違いも消えないと私は思います。

それを説明するために、問題やすれ違いを個別に捉えて明らかにして分析していきます。

悪いのは誰か? 責任は誰にある? 配慮をする理由は?

結論から言って、問題やすれ違いの原因になっている部分は以下です。

1、人が足りないのは基本的には企業が防止しないといけない点
2、休むにあたって必要な準備をするのは基本的には休む人な点
3、同僚は自分たちの大変さを理解して欲しいという点
4、不遇な人の前で、わざわざ喜ぶ必要は基本的には無い点
5、公共のために役立っている人は基本的には祝福されるべきだという点

この五つです。
大前提として、これらは全く別々の問題です。
別々に議論することができます。

順番に見て行きます。

1、人が足りないのは基本的には企業が防止しないといけない点
これは分かりやすいですね。
病欠のようにいきなり産休に入る人はいないので準備はできます。
また社員と良好な関係を築けていれば、事前にライフプランを聞いて相談しあうこともできるはず。この責任を果たすことを社会的、個人的に求めていくことは非常に大事でしょう。
ただ、それをうまく求められない人、諦めている人は、企業がこの責任を果たさない鬱憤を休む人に向ける場合があって、問題が複雑化する。
でもそれらは区別して議論すべきです。


2、休むにあたって必要な準備をするのは基本的には休む人な点
これは企業や同僚が言いたい場合があるでしょう。
後継の人にちゃんと引継ぎをしたりなどの準備は休む人の責任です。
もちろん、それをサポートするのは企業の責任でもありますが「ちゃんと引き継いでね」と指示をするのも立派な責任の果たし方の一つです。

ただ、もし仮に責任を果たさない人が休むとなれば、いい顔をされない場合もあります。しかし、どこまでが責任を果たしたと言えるのかという見解をみんなが一致させるのは難しい。人が足りない職場では尚更でしょう。

しかし、これを産休を取る人全般の問題に拡大させる必要はないはずです。
この場合の原因は、産休でもクッキーでもありません。
その企業が無責任か、その休む人個人が無責任かの問題であって、責任を果たして休みを取る人を巻き込む必要はない。


3、同僚は自分たちの大変さを理解して欲しいという点
これは責任ではなく配慮の問題なので、非常に難しい話になります。
故に、一番大事ともいえる。
同僚は同じ仕事に一緒に取り組む仲間です。企業も、休む人も、周りの同僚も全員が責任をちゃんと果たしたとして、同僚の特定の人が大変になる場合もあるでしょう。それは誰が悪いわけでも無責任なわけでもない。
でもそれを気付いてあげることは、人間として大事なことです。

つまり同僚が求めているものや、それを察して休む人がしていることはシンプルです。「私は状況を理解しているという意思表示」です。
具体的には、休んでいる人に責任はないけれど、仲間が大変なことを理解しているという意思表示をして欲しいし、したい、というだけの話です。

ここで思い出してほしいのが、メジャーリーグでのデッドボールの話です。
配慮という概念が無くなれば、企業や休む人や同僚が責任を果たさないことが解決されるのでしょうか? 例えば、仕事中に「ありがとう」と言った言われたことは誰しもあると思います。
しかし、配慮が要らないなら、その「ありがとう」という言葉は必要なくなってしまうかも知れません。お互いに責任を果たせばいいだけなら「やりました」「確認しました問題なしです」で終わりです。

それで問題やすれ違いが解決するかというと、疑問が残ります。
仕事が減るわけでもなく、結局みんな心の中で相手を疑うだけだと思います。よって、単純に個人主義を追求しても、問題は解決しません。

4、不遇な人の前で、わざわざ喜ぶ必要は基本的には無い点
これもまた配慮の話ですね。
例えば同僚でつい最近父親が亡くなったという人がいたとして、その人前で自分の父親の話を普通するでしょうか? 基本は避けると思います。
しかし、それは避ける責任があるからではありません。人としてわざわざ誰かを傷付けてまで自分のしたい話をするのは悪いことだからです。

ただ、この例と今回のテーマの質の違いが、折り合いを困難にします。
それは、産休を取る人がいるだけ苦しむ人が誰かは厳密に気付きがないこと(おそらくそういうコンプレックスがある人はその気持ちを表沙汰にしないでしょう)そして、仕事の引継ぎなどをする関係上、産休は公にして理解を求めることは必須だからです。

それでも出来る配慮はあります、明らかに反応が薄い人に惚気トークをするとか、不妊治療をしているとかそういう事前情報を持っているとか、そういう場合は個別に気遣いをしてあげることはできるでしょう。逆に聞いてしまった人は、相手に悪意があるわけでもないし、それは避けられないことだったわけですから、その負の感情は内々で処理すべきです。SNSを使うにしても一応は公の場ですから、最低限の節度は必要です。どうしても攻撃的に吐き出したいなら、親しい友人に打ち明けるとかが良い。友達がいないなら今ならネットで手軽にナイーブな話を聞いてもらえる環境も整っています。
よってこれもまた個別の問題と言えるでしょう。

5、公共のために役立っている人は基本的には祝福されるべきだという点
これもまた配慮の話ですね。
アベマTVでは、平山直之アナウンサーが合計特殊出生率が低いという話をされていましたが、その通りです。そして仮に合計特殊出生率がそんなに低く無かったとて、子供が育っていくのは社会にとって必須です。自分が老いたときに、社会を支えてくれる若い人を育てているわけですから、それは基本的には祝福されてしかるべきだと思います。もちろん、それで私は他の人よりもずっと社会貢献しているんだと鼻にかけるようなマウントをされるなら、それは批難されてしかるべきだと思います。これもまた配慮ですね。
しかしこれも、産休を取る人全員に当てはまるようなものではなく、個別に扱うべきです。

以上のようにすべてが個別に話すべきことで、
単純に「産休クッキー問題」みたいなことでまとめて話すべきではないということを分かってもらえたらなら幸いです。

ということでまとめに入りたいと思います。


結論:「気付きという配慮」と「受け入れるという配慮」の相互承認のバランスが大事。

アベマTVのひろゆきさんの発言を引用してまとめたいと思います。

「クッキーの赤ちゃんの顔がムカつくとか、いろんな気持ちもあると思うんですけど、~中略~ こちらの意見が正しい、こちらは違うみたいな善悪とか正義とか悪でなぜ人は括ろうとするのか?(笑)」

「どんなものでも、悪意だろうと思ってみたら悪意に見えちゃうんですよ。多少文章に齟齬があるとか、書き方が拙かったとしても、これは善意でやってるんだよねって頭悪く受け止めれば良いと思うんですけど、みんな考えすぎだと思うんですよね。」
これはこういう状況で、このクッキーを渡しているのは悪意なんだ!みたいな。なのでもうちょっと大らかになるべきということなんじゃないかな?と思うんです」

ひろゆき

ひろゆきさんの言う通りだと思います。

そのためには、相手や状況への「気付きという配慮」が大事だと思います。

そういう目線で見るといろいろと分かってくる。どうしてもどこかで聞きたくないことを聞かないといけない瞬間もあるし、言いたくないことを言わないといけない瞬間もある。

でも相手のことをちゃんと考えれば、それはお互い様で仕方ないよねって「受け入れるという配慮」ができるようになる。

そういうことを私は自身は大事にしたいし、大事にする人が多くなったら良いなと思います。ありがとうございました。





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