21. お風呂できる天地創造

題:お風呂でできる天地創造
※No. 7の記事とあわせてお読みください

 旧約聖書『創世記』にはこの物質世界(下界とも言う?)の作り方が書かれています。とても壮大な話で、われわれの理解の範疇を超えているように見えますが、実は、その工作過程は家庭のお風呂場で再現できるのです。創世記の天地創造は子供の遊びを模しているのです。小学生の今年の夏休みの自由研究は「天地創造の再現」にしてみてもいいかもしれません。

■上下二層の水

 神は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」神は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。神は大空を天と呼ばれた。(創世記1章6節、新共同訳)

 上の記事では、まず水でいっぱいになった空間が想定されています。プールか海の中が舞台のようです。わたしは水でいっぱいになった浴槽を想像します。その浴槽はおそらく創世記の1章1節の「深淵」のモデルかと思われます。

■大空とは何か
 神はその水の中に「大空」(別称:天)なるものを差し込みます。それによって、水でいっぱいになった空間は上部と下部とに二分されます。重要な点は、差し込まれた「大空」なるものの上に水がのしかかっている、ということです。大空が上層の水を支えているのです。たまごサンドの卵の部分が大空であり、上下の食パンが水なのです。
 大空をヘブライ語でラキーアというそうですが、その意味を辞書で調べてみると、平らな広がり、となっています。ギリシャ語ではステレオーマと言うそうです。ギリシャ語版創世記の日本語訳は講談社学術文庫の秦剛平訳で読めますが、そこではステレオーマは「天蓋」と訳され、「「固いもの、固形のもの」を意味する」と解説されています。
 以上の意味をあわせて考えるに、どうやら大空というのは、固い鉄板のようなもののようです。それが底板となって上層の水を支えているのです。

■たらい
 創世記第1章では、空は固い板としてイメージされているのです。以下で説明しますが、わたしはその板をステンレス製のたらいとしてイメージしたいです。

 神は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現われよ。」そのようになった。神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。(創世記1章9-10節)

 ここでは大空の下の水に話題が移っています。水でいっぱいになった浴槽にステンレス製のたらいが沈められ、水が上と下に分けられたからです。
 浴槽の水の中に、たらいの口を下にして沈めていくと、たらいの中に水のない空間ができます。そしてそれをさらに沈めていくと、ついには浴槽の底にたどりつきます。たらいの下部分の水が一か所に寄り集まれば、必然的に水の無い部分が形成されます。それが乾けば、陸地です。

■たらいの内側
 水の中に沈められたたらいの内側には何かが置けそうです。たらいが鉄製であれば、磁石製の飾り物を貼り付けられるかもしれません。創世記の神はそのようにして太陽と月と星々を配置するのです。

 神は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。神はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。(創世記1章16-18節)

 ここで神は太陽と月を大空に「置いて」います。すでに大空が固い板であることが判明していますから、「置く」という言葉選びには納得がいきます。わたしは鉄板に磁石製の太陽と月が張り付けられたのだと想像します。

 神は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」(創世記1章20節)

 大空をたらいの底としてイメージすれば、鳥の生息地の説明文も容易に理解できます。浴槽の水の深くに沈められたたらいの中には、乾いた陸地と空間と、たらいの底面があります。鳥はそのたらいの内側の底部分、つまり「面」を生息地としているのです。張り付けられた太陽と月のそばです。
 以上のように、創世記第1章の天地創造の描写は、浴槽の中でたらいを使って遊ぶ子供の遊びをモデルとしているのです。

■大洪水
 大空は、鉄板を張り伸ばして造られたたらいの底のようなものでした。それが上方の水をささえ、たらいの中の空間に水が浸入しないように踏ん張っていたのでした。しかしそれが崩壊する時がやって来ます。それが、創世記第7章のノアの大洪水です。

 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごく裂け、天の窓が開かれた。雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、…(創世記7章10-12)

 大洪水は長雨によって引き起こされたのですが、それは雲から滴る雨ではなく、天の窓から注ぎ込む漏水だったのです。鉄板としての天は、上方の大量の水を支えるダムのようなものでしたが、その鉄板の窓が開放されることにより、たらいの中の空間に一気に水が流れ込むことになります。流れ込んだ水は、たらいの中の空間を下から順に浸していき、ついには空間の上限、すなわちたらいの底部にまで達します。だからこそ、地上の動物だけでなく、「空の鳥に至るまでぬぐい去られた」のです(創世記7章23節)。ノアの大洪水とは、空間が水で満たされることによって引き起こされた、生物の溺死だったのです。

作:Bangio
2021. 02. 19

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