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ファシリテーションについて、慈愛に満ち満ちて冷酷に語りたい

こちらは毎年恒例ファシリテーターアドベントカレンダー向けの記事です

今日は満月なんです。

なので、ファシリテーションを実践している方が満ち、かつ積極的に欠けていくことを促して、次の新月に向かう一助になればうれしいなぁ、という気持ちで書きます。

私のファシリテーションのスタイルはホールシステムアプローチ型がメインで、研修・会議ファシリテーションもします。テーマはまちづくり、SDGs、観光振興やブランディング、理念形成や浸透、新規事業(商品)開発、組織開発、人材開発のあたりです。

◆慈愛◆

ちょっとしたテクニックの話。場が開いている間の、私のちょっとした配慮や注意が、みなさんのプラスαになればうれしいなぁ。
いろんな人が言ってるけど、あまり最近聞かないなーってことを中心に。

1、物理的に場を整える

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会場に来た時に「わぁ」と思えるようにしてます。ああ、いつもと違う場所に来たんだと。なので、サークル(車座)で始めるのは手っ取り早いので(笑)好きです。できるだけ、サークルセンターは飾ります。
進行中はとにかくキレイにします。おかしや飲み物のゴミは捨てる。荷物が足元にバラバラと置かれているなら荷物スペースを案内する。椅子が机がバラバラすぎるなら整える(適度な乱雑感がアクティブに見える場合もあるのでその辺は見極めます)。
対話に集中してもらうためには参加者の「気になること」をできる限り排除していくことが大事なのですよね。

2、インストラクション(説明)の区切り方に超・気をつける

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ワールドカフェにしろOST※にしろ、参加者にインストラクションをするときには説明の順番や何ステップ先まで伝えるか、どこの区切りで動いてもらうかにかなり気を遣います。
例えば、ワールドカフェなら、グループを作ってもらってから説明か、逆か。グラウンドルールは問いの投げかけの後か前か。説明を一気に全部してしまうのか、一つ説明したらアクションしてもらうか。私自身は、3つ以上の動作指示をまとめて出すことはほとんどありません。区切り方は参加者の特性や経験、雰囲気を見ながら決定します。

※OST→オープンスペーステクノロジー。対話手法の一つ。
ご参考に→https://jinjibu.jp/keyword/detl/473/

3、待つ。というか指さない。

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「共有してください」「どなたか発表してください」やOSTのテーマ出しの時ですね。いくらでも待ちます。みんなが「本当にいいよ進んで」という無言の空気を出すまでは。
私が「よければ共有してくださーい」と言う時は、想いが発露して話したい人がいたらぜひ挙げてほしいというだけなので、シーンとなったら「じゃ行きましょうか」と次に進行させます。もし本当に発表・共有したほうがいいと思った時(対話の質や深さに差がありすぎるなど)には場に委ねずに確実に共有できる方法を選択します。
OSTでテーマが一つも出なかったら(少なすぎたら)猛省です。OSTは参加者側に「場への信頼感」と「湧き出るパワー」が必要なので、出なかったらそれは参加者のコンディションに寄り添ってなかったということ。そういう経験はありませんが。(なのでOSTをやるかどうかは当日、その場で決めます)

4、すべてのアクションの前に「意味ある?」と自問自答する

定番すぎて、意味なく発動される危険性が高いアクションは

「全グループ発表」
「お近くの方と感想を話してください」
「明日のアクションを考えましょう」

→あっちのグループの話なんて文脈わかんないし、聞いてもね・・・
→え?このタイミングで別に話せることないんだけど。
→えっと・・・「今日の出来事を友達に話したいと思います」

意味のないアクションはやめましょう。時間の無駄です。
ファシリテーターが間でコメントする場合もそうです。ファシリテーターが「話す」行為が、自分自身の欲求を満たすためだけになっていないか、参加者の一助になっているかをトコトン意識します。

5、対話終了のタイミングを観察して見極める

時間が来たら終了なわけですが、40~50人程度の場(10グループ程度)であれば、3分ほどよーーーーーく観察していると、7~8割のグループで話が途切れる瞬間が生まれます(明確に途切れるのではなく、話しが終わりかけていたり、笑いが起きていたり、「うーん」「ねぇ・・・」とうなずきが中心で次の話題に移りかけていたり)。その瞬間をとらえて終了の合図を出すと「途切れた!!!」という感覚が少なく、地味に満足度が高まります。
少なくとも、誰かが身振り手振りを交えながらアツく語っている途中で終了の合図は出しません(仕方ないときもあるけどね)。

◆冷酷◆

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正直、どこかで聞いた話とか誰かが言っていたことなんて、もはや聞きたくありません。なので、そういうことは話さないでください。そういう話しかできないという方は・・・黙っててください。

先日とある場で、私が冒頭に言い放った言葉なのですが、ま、まっとうなファシリテーターならあり得ない発言ですし、場を盛り上げるために(鼓舞するために)こういうことをいうファシリテーターは「お前ナニサマだよ」という反感しか抱かれません。

基本的に慈愛に満ちたファシリテーションで定評のある私ですが(自分で言うw)、たまに「ぐぐっ…」と踏み込んだこういう発言をすることがあります。ただ、こういう発言を冒頭にするとき、条件は2つです。

私自身が圧倒的な当事者意識で(どっかの会社みたいだが)そのテーマに向き合い行動していて、かつ参加者の3分の1以上が今後行動する仲間になる・なっている時です。

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結局、質が高く深い対話の場をつくれるのは、そのテーマについての当事者で、日常的に思考し行動しているファシリテーターではないかと思うわけです。
プロのファシリテーターはどんな場面でも質を高めること(オーダーに合わせて、参加者のために、社会のためになど高める方向性は多々あれど)を意識していますし、平均点90~95点の満足度を創出します(それでお金を頂いているわけですから)。
ただ、当事者であるファシリテーターは、90~120点の幅のある、平均点100点の場をつくれるんだと思うのです。
それはファシリテーターが、このテーマを次に進めたいという強い想いと覚悟を持ってその場に挑むからでしょう。

この章の冒頭に書いた場では、私は情熱の低い人に合わせるつもりは毛頭ありませんでした。
全員を後ろからサポートするファシリテーションではなく、
先頭集団で走る人たちが自由に力強く走れるように。
それを見て憧れる人たちがちょっと背伸びしてついていけるように

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そんなわけで改めて、対話の場の「インビテーション(招待)」はかなり重要だと思いました。
そもそも、対話の場というものはこういうものなのかもしれません。
ただただみんなが居心地よく、の前に、トランスフォーム(変容)を産み出すことが、(時に中長期的な)ゴールとしてある。そこにはヒリヒリとしたスパイスも含有します。

「これだけの人をここに集めてしまった」

その緊張感によりファシリテーターのパフォーマンスはさらに上がり、そういう場を持てる(=当事者として行動するテーマを持っている)ファシリテーターは市場の中でも、マインドとしても、スキルとしても強く成長できるのだと思っています。

しらんけど。

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これまで出たトークセッションの中で最もカッコよくて、コンセプチュアルだった場。白樺の切り株に真ん中には焚き火。フィッシュボウル。
(こういうことを書くと「黒井さんって俺たちのこと結構好きだよね」と言われるのが癪に触る)

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