processing and tuning
ダンサーの仁田晶凱さんがジャグラーの目黒陽介さんと小説家の山本浩貴さんと組んで行ったダンス公演「processing and tuning」を三鷹へ見に行った。
私は実は一度、この公演を見ている。
一か月前に横浜で試演会を見て、非常に面白かったので見に行ったのだ。
本番は試演会よりも公演のねらいを観客に伝えようとしていて、面白かった。
私が考える公演のねらいを説明するために、記憶している範囲で、全体の構成を列挙する。
以下の通りだ。
◆全体の構成
①ボールや輪を出演者や観客の間でキャッチボールをしたり、イスを使ったワークショップ。
②目黒さんが仁田さんを紹介する。
※当然、言葉での紹介ではなく、体を使って紹介する。
③仁田さんと目黒さんとの間であらかじめ《プロレス》を行う。舞台上にいる山本さんはその様子を見て即興で文章を書く。
※本番では、試演会ではなかった①の時にプロレスのルールと勝敗が舞台正面に映し出されていた。
④仁田さんが先ほどの《プロレス》の動きをもう一度、一人で思い出しながら行う。
⑤仁田さんは山本さんの文章を読み上げる。
※私が見た回では、山本さんが不在のため、ベストテイクの文章を朗読。
⑤と⑥の間にもまだ展開があるのだが、思い出せない。
⑥出演者のトーク、観客からの質疑応答。
タイトルにあるように、公演の中には様々な形の「調整の過程」が組み込まれている。
たとえば、《プロレス》の場面は本気のように見せても、もう勝敗は決まっているのだ。
だから、うまく筋書に沿うように、互いに体を動かさなくてはならない。観客は勝敗を越えたその調整の過程を見せられている。
もう一つ隠されている「調整の過程」がある。
観客が公演を見る前に行うワークショップだ。
実際に観客がボールを投げたりして体を動かすことによって、「ダンスを見る」という体に調整するのだ。
日常生活でもコミュニケーションの調整をすることがある。会話をしていて、知っていることを知らないと答えたり、相手の意図を組もうと質問を重ねたり、その《プロレス》的な調整の中に現実の中にフィクションが混じる。
その調整の過程から発生する虚実皮膜を公演全体に張り巡らしている。
私は演劇やダンス公演をほとんど見たことがないので、比較ができないのだが、ワークショップを組み入れたり、型破りな、かなり新しいことを行っているのではないかと思う。
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